「悲しく、残念」「解決へ本当に頑張ってこられた」 安倍首相辞意に拉致被害者家族ら

 北朝鮮による拉致問題解決を最重要課題に掲げてきた安倍晋三首相。突然の辞任表明に、被害者家族らには驚きと落胆が広がった。拉致問題が膠着(こうちゃく)する中、年を重ねた家族は「後を継ぐ首相も全力で取り組みを継続し、一刻も早く解決してほしい」と強く求めた。

 「拉致事件の解決へ本当に頑張ってこられた。悲しく、残念です」。横田めぐみさん(55)=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(84)は無念をにじませつつ、「安倍首相の後を継ぐ方、すべての政治家、政府が国民、国家を守るという原点に立ち返り、拉致解決に全力を尽くしていただきたい」と訴えた。

 6月には、めぐみさんと再会を果たせず夫、滋さんが87歳で死去。早紀江さんは「被害者も家族も年をとり病も抱え、一刻の猶予もありません。拉致への理解は国内外で広がっており、希望を失わず、国民の皆さまと一致団結し、全被害者の救出が実現することを願います」と力を込めた。

 辞意表明の記者会見で家族の相次ぐ死去にも触れ、「痛恨の極み」と述べた安倍首相。有本恵子さん(60)=同(23)=の父、明弘さん(92)=も2月、妻の嘉代子さんを94歳で亡くした。明弘さんは「家族にきちんと向き合ってくれ、一番信頼していた。拉致解決へ思い描いていたことが、いっぺんに崩れ去った」と落胆し、「最後までやり遂げてほしかった。辞めるのなら、後任にしっかりとつないでほしい」と胸の内を語った。

 安倍首相の辞任で拉致問題への取り組みが後退することに心配の声もあがる。

 家族会代表で田口八重子さん(65)=同(22)=の兄、飯塚繁雄さん(82)も「期待が大きかっただけに残念。われわれに残された時間はもう長くなく、拉致解決に向けた動きが切れ目なく続くよう、後継者を早く選定してもらいたい」と話した。

 また、次期政権については、「時間の猶予がない。引き続き拉致を最優先、最重要の課題として、解決に向けて進んでほしい」と期待を込めた。

 八重子さんの長男、飯塚耕一郎さん(43)は、「拉致の解決に意欲があり、われわれ家族とも信頼関係があった。期待するところは大きかっただけに残念」としたうえで、「今はまず、回復に努めてほしい」とねぎらった。

 増元るみ子さん(66)=同(24)=の弟、照明さん(64)は「解決を見ないまま道半ばで退くのは信じられない。いったん静養して戻ってくるという選択肢はなかったのか。安倍さんのほかに拉致を担う人は今の日本にはいないのに」と嘆息した。

 松木薫さん(67)=同(26)=の姉、斉藤文代さん(75)は拉致問題の風化が加速することを懸念し、「国内外のさまざまな課題に埋もれてしまうのが心配。命をかける思いで、国民に拉致の解決を訴えなければ」と語った。

 平成14年に帰国した拉致被害者、曽我ひとみさん(61)は「帰国前後から拉致問題解決に向けて力を入れてくださって感謝しています。まだ、全員が帰ってきていない状況なので、それまで一緒に戦いたかった」とコメントした。

 支援組織「救う会」の西岡力会長は、「最優先課題として拉致に取り組むと、ずっと言い続けていらっしゃった。『先に圧力、その後交渉』という対北戦略が効いてきて、いよいよ仕上げの段階に来ていたなか、残念としか言いようがない」とした。

 北朝鮮による拉致の可能性が排除できない「特定失踪者」の家族の支援のほか、拉致事件の調査を行う特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は「私たちは、いつまでもため息をついていることは許されない。もう一度、国民が先頭に立って、誰が総理になろうが拉致問題を前に進めざるを得ないような状況を作ることだ」とコメントした。

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