地上イージス断念 日本防衛に空白生むな 政治部長・佐々木美恵

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)配備計画の断念に伴い、政府は新たな国家安全保障戦略の検討に入る。防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画(中期防)を改める方向だ。

 北朝鮮と中国はミサイル技術を高度化し、保有数も増やしている。また昨年には北朝鮮が従来の弾道ミサイルより低高度で飛び、最終段階で再上昇する変則軌道の新型ミサイルを開発していることも確認された。空中での迎撃の難しさは格段に増す。地上イージスは令和7年からのシステム運用前に能力や抑止効果に限界が生じる懸念もあった。その前にミサイル攻撃から国民を守るために、より明確な方法に置き換える必要がある。ミサイル発射拠点を攻撃する「敵基地攻撃(反撃)」能力の保有も本格的に検討すべきだ。

 日本は現在、海上のイージス艦から発射する弾道弾迎撃ミサイルSM3や、地上からのPAC3(地対空誘導弾パトリオット)での迎撃を中心とするミサイル防衛態勢を敷く。河野太郎防衛相は海上自衛隊イージス艦7隻の運用で日本の安全保障にただちに影響は出ないとしているが、イージス艦は中国に対する警戒監視活動という任務もある。隊員の負担軽減は遠のく。日本の防衛に空白が生じる事態は避けなければならない。

 今回の計画断念はいかにも唐突だった。直接的な理由として政府が挙げたのは、迎撃ミサイルのブースター(補助推進装置)の落下先を制御しきれないという技術的問題だ。それが保証できず、改修には時間と2千億円以上の費用がかさむとしている。2月以降に、迎撃ミサイルを共同で開発する米当局者と協議する中で問題が判明したという。無駄な支出を避けるためにも決断は早い方がよいが、米当局からどのような説明を受けてきたのか。防衛省は丁寧な説明が必要だ。

 その上で政治は国を守るための負担についてより率直に語り、国民の同意を得る努力が求められる。国民も安全と平和を「どこかの、誰か」に委ねる依存思考から脱却しなければならない。戦後75年間、日本は米国との同盟関係によって自国の安全を得てきた。しかし北朝鮮の核・ミサイル開発は進み、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域での中国公船の動きなど中国の覇権主義的振る舞いは看過できない状態が続く。安保戦略の改定の議論は日本の安全を他国任せにせず、自主性を増すかたちで担っていくための機会にしたい。

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