突然の国防政策転換…河野防衛相、費用対効果の疑問譲らず

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画の停止は、事実上の計画撤回に等しい。河野太郎防衛相がこれほど重要な国防政策の転換を突然打ち出したのは技術的な問題が判明したからだが、費用対効果に疑問符をつけていた経緯が背景にあるとの見方も出ている。

 ■2200億円以上、開発期間12年

 河野氏は16日の記者会見で、計画停止の理由を「約束を実現するためにコストと時間がかかり過ぎる」と説明した。防衛省は「ブースター(推進補助装置)を確実に演習場内に落下させる」と配備候補地である秋田、山口両県に説明してきたが、その約束を守れそうにない、というわけだ。

 使用予定だった迎撃ミサイルSM3ブロック2Aは計2200億円以上、12年の開発期間を要した。河野氏は確実に演習場内に落下させるために再開発と同等のハードウエアの改修をしようものなら同程度かかる可能性があると考えた。

 防衛省内では春先以降「防衛装備品の調達計画は本当に合理的なのか、河野氏に厳しく説明を求められている」といった声が聞かれていた。特に米政府を通じた「FMS」(有償軍事援助)で契約した米国製のイージス・アショアと無人偵察機グローバルホークには厳しい目を向けていたという。ただ、「さすがに計画破棄はしないだろう」(防衛省幹部)とみられていただけに衝撃が広がる。

 ■「漏れ」警戒…与党に事前説明せず

 防衛省関係者によれば、5月下旬、ブースターの問題を解決するにはハードウエア改修が必要だと判明。6月3日に防衛省幹部から最終報告を受けた河野氏は、翌日には首相に計画停止を相談したもようだ。

 河野氏は今国会会期内に発表した。国会で説明する機会を設けようとしたとみられるが、17日の会期末間際となった上、「これまでさまざまな情報が事前に漏れることがあった」(河野氏)ため、与党にも事前説明はせず。自民党内からは不満が噴出した。

 ミサイル防衛網整備に取り組んできた自民党国防族重鎮の浜田靖一元防衛相は16日の党会合で「今日一日で(説明が)終わりだといわれたらやっていられない」と激怒した。

 その数時間後、河野氏は党本部で野田聖子元総務相に「動揺が走っているわよ。特に一生懸命やってきた人たちに」と声をかけられたが言葉少な。そばにいた浜田氏は冷めた目で一瞥(いちべつ)し、立ち去った。(田中一世)

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