新型肺炎の恐怖で逆風の北 拉致解決へ政府は局面見極め大胆に動け

 北朝鮮による日本人拉致問題の進展に大きくかかわる米朝間の交渉は先行きが見通せていない。そんな中で、拉致被害者家族会と支援組織「救う会」が9日に取り決めた今後の運動方針に、「厳しい制裁が北朝鮮政府を追い詰めている」との認識が盛り込まれた。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は昨年、国際社会による制裁を「通常なら1日でも耐えられないような難関」だと認めた。制裁は確かに効いている。

 ただ「雑草を食べても核開発計画を止めない」とロシアのプーチン大統領が指摘したように、しぶとい。北朝鮮に変化が期待できるのは最高指導者の命に危険が及ぶなど国家の一大事が起きたと判断したときだけ、とも指摘される。

 その北朝鮮がいま、新型コロナウイルスの恐怖に直面している。一般国民に高度な防疫・医療体制が行き渡っているとは言い難い国にとって、蔓延する恐れがある未知の病原体の出現は「国家の存亡にかかわる重大な政治的問題」(1月29日付、労働新聞)なのだ。指導部は党組織をあげ、侵入と国内拡散防止に努めるよう指示している。

 既に、国境を接する中国東北部の三省で多数の感染が確認されているが、中朝の“国境封鎖”が長引けば経済が危うくなり、蔓延を食い止められなければ滅亡がちらつく。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、制裁破りを懸念する米国をよそに、北朝鮮への旅行解禁を画策する。だがウイルス感染が確認されている韓国から旅行者などを受け入れられない。

 一方、米国のトランプ大統領は大統領選で頭がいっぱいだ。北朝鮮の小さな挑発に乗ってくることはない。万が一、高硬度の挑発に出れば手痛い攻撃を受けかねない。

 八方ふさがりの北朝鮮は局面打開を求め、次の手を打とうとしているとみるのが自然だろう。

 家族会と救う会が示した運動方針には圧力や国際包囲網の強化、世界との連携から国内での運動強化まで、北朝鮮が「全員一括帰国」の交渉テーブルに出てくるよう、あらゆる活動が盛り込まれた。政府はこの方針をしっかり受け止め、大胆に活路を求める時だ。

(加藤達也) 

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