大村知事が河村市長に反論 不自由展の展示批判は「憲法違反」

 愛知県で8~10月に開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の実行委員会の会長を務めた同県の大村秀章知事が24日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見した。大村氏は、批判が殺到して一時中止した企画展「表現の不自由展・その後」で展示された昭和天皇の肖像を燃やして踏みつける動画や慰安婦像などを実行委の会長代行だった河村たかし名古屋市長が批判していることに「憲法違反そのものではないか」と反論した。

 大村氏は「75日間の会期を無事に安全、安心、円滑に終え、多くの方に楽しんでいただくということに心を砕いた」と振り返った。自身の役割については「芸術祭について『カネを出しても口は出さない』に尽きる。現にそうした。私が表現の内容について『これがいいからこうだ』『これが悪いからこうだ』とは言えない」と述べ、憲法21条が保障する表現の自由を尊重したと強調した。

 さらに「普通のことを普通にしてきたと思っている。しかし、それがそうではなかったということが極めて驚きだ。そういう社会になりつつあることへの驚きだ」と述べた。

 展示内容に対し、脅迫も含めた抗議が殺到したことについては「違う立場の人を認めない。違う意見を認めない。そして徹底的に攻撃する。攻撃にあたっては、事実でないことも片っ端から書き連ねて、相手をおとしめて、攻撃をして、そして自分の立場を確保する。こういうことがまかり通る今の日本の社会に驚きを持っている」と語った。

 大村氏は、河村氏について「名古屋市長も主催者だが、なぜか私に一言も言わずにマスコミを引き連れ、『日本人の心を踏みにじるもので、内容がけしからんからやめろ』と言った。大変驚きだった」と述べた。

 さらに河村氏から「8月2日に『日本国民の心を踏みにじる行為であり許されない。厳重に抗議し、即時中止をしろ』との文書をいただいた」と紹介。「憲法違反の疑いが濃厚ではないか。そのものではないか」との認識を示した。

 河村氏に対しては「表現の自由ではなく、(事前に)知らされていないことが問題だということに論点をすり替えた。公の場で『大村が勝手に決めてやった、と市から聞いている』という事実ではないことも言われ、極めて遺憾だ」と主張した。

 大村氏は「事実関係」として、7月22日の段階で名古屋市職員に展示内容を伝えていたと強調。市職員が県側に対し「まずいのではないか」と問いかけ、県側が「知事がいいと言っている」と述べたと河村氏が主張していることには「事実ではない」と明言し、市職員にも確認しているとした。その上で「事実でないことを言い募って相手を攻撃し、自分の立場を維持することがまかり通るのかということが極めて遺憾で、残念でならない」と語った。

 大村氏は、表現の自由に関し「よほどのことでない限り制限することはできない」と繰り返し主張。「人としての尊厳が表現の自由だ。100人が100人、全員違う。それを認め合わなければならない。民主主義もそこから始まる」と強調した。

◇「検閲」批判の発言に質問

 記者会見では、「検閲」を批判する大村氏の発言を疑問視する質問も出た。

 芸術祭のあり方を検証してきた県の検討委員会が今月18日にまとめた最終報告では、大村氏が不自由展が一時中止された後の6月20日、芸術監督を務めたジャーナリストの津田大介氏に対し慰安婦像について「何とかならないのか、やめてくれないか」「実物ではなくパネルにならないのか」「写真撮影は禁止にできないか」と懸念を伝えていたと明記した。

 この点について「カネは出すが口は出さない」との方針と矛盾するのではないかと問われた大村氏は「強い希望は言ったが、それ以上のことは言えないということだ」と説明した。

 また、芸術祭の公式サイトで、取材に関する注意事項として「誌面掲載、番組放送前に原稿を確認させていただいております。必ず校正段階での原稿・映像等を事前に広報専用メールへご提出ください」と記載されていることについては「私は承知していない」と発言した。「いろいろな経過があったので、安全、安心を確保するために、どういうことを書いたのかお知らせくださいということだったのではないかと思う」と述べた。

 さらに「実際問題、そういうふう(事前提出)にはなっていませんよね。現実に実効性があるのかということも含めて担当者に聞いてみたい」と語った。「まさに検閲ではないか」との質問に対しては「そういうふうにはならないでしょう」と繰り返した。

 不自由展は、昭和天皇の肖像を燃やして踏みつける動画や慰安婦を象徴する「平和の少女像」などに抗議が相次ぎ、8月1日の開幕から3日間で中止になった。安全対策を強化した上で10月8日に再開し、トリエンナーレが閉幕した同14日まで公開された。

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