不自由展は公共事業の問題 河村名古屋市長

 8月、ある国際芸術祭が「炎上」した。愛知県や名古屋市などが主催した「あいちトリエンナーレ2019」。その中の企画展「表現の不自由展・その後」で昭和天皇の肖像を燃やして踏みつける動画、慰安婦像、旧日本兵を揶揄(やゆ)する作品が展示された。批判が殺到し3日間で中止したが、後に再開した。あのとき何が起きていたのか。トリエンナーレ実行委員会会長代行の河村たかし名古屋市長を訪ねた。(酒井充)

 「展示内容を知ったのは7月31日の前夜祭。隣にいた市議が『慰安婦像が展示される』ようなことを言ったもんで、『そんなバカな』と驚いたわけです。公共事業ですから。次の日、日本維新の会代表の松井一郎さん(大阪市長)から電話が来て『慰安婦像が出品されとると聞いたで』と言うもんで。頭から抜けていた。『そんなもん、あり得ん』と思うとるから」

 《河村氏は冒頭からエンジン全開だ》

 「次の日(8月2日)、見に行ったんです。そしたら昭和天皇の動画があり慰安婦像。それとドーム状の『間抜けな日本人の墓』(=時代の肖像-絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳-)。太平洋戦争で死んだ日本人の寄せ書きですわ」

 「自分のカネでどこかでやっていれば、あーだ、こーだと言わない。でも公共事業だ。名古屋市、愛知県主催というのがでかい。陛下に敬意を持つ人がほとんどです、日本人は。公金を置く場合、一定の審査義務みたいなのがある。そうでなければ無政府になってしまう。公共事業は納税者の税金が使われる。誰かが審査しないといかんでしょ」

 《しかし、名古屋市は主催者。なぜ事前に展示内容を把握しなかったのか》

 「任せていたわけです。県がほとんどやってますのでね。こんなこと起こると思わんもんだね」

 「7月22日に県から作者と題名、内容と写真が提示され、慰安婦像と『間抜けな-』は写真で載っていた。市当局は『まずいのではないか』と言ったが、24日に県は『大村秀章知事がいい』と言っていると。こっちも誤った。(市が)オレに言わなかったんですよ、そのことを」

 「でも出展一覧が違っとった。だまされたわけだ。陛下の(作品)はリストに『PartI』とあり、写真があった。ところが展示されたのは動画の『PartII』だったんよ」

 《河村氏は8月2日、実行委員会会長の大村氏に抗議文を出した。「即時、展示の中止を含めた適切な対応を求める」との内容だ》

 「大村氏に実行委員会を開いてくれと何回も言ったけど、独断でやった。公共事業は大方の市民が納得してくれなアカン。芸術への助成は名古屋市もやってますよ。役人が審査し予算を議決して。だけど陛下の動画に助成するわけにはいかんでしょ。常識ですよ」

 「大村氏は『憲法違反だ』『公権力が口を出すことは検閲だ』と。でも、これは公共事業の運営の問題で、表現の自由の問題じゃない。権力行使したのは大村氏。会長が会長代行に相談せにゃ、いかんですよ」

 《企画展は10月8日に再開し、河村氏は会場前で座り込んで抗議した。芸術祭は同14日に終わったが、2億円を負担する市は未払い金3300万円を抱える》

 「だまされたものにカネを払うのは簡単じゃない。監査請求が起きて負けるよ。かといって独断もまずいんで、名古屋市として検証委員会を作ったんです」

 《検証委は19日に初会合を開く。河村氏が最後に付け加えた》

 「おかしいよ、日本は。危ない国だと思いますよ、本当に…」

 平成から令和へと元号が変わった2019年が幕を閉じる。時代の節目となった今年、話題となった政治の現場や当事者を訪ねた。

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