水害防ぐ神殿ならぬ「地下トンネル」雨水集めて大阪湾へ

 東日本の各地に甚大な被害をもたらした台風19号の上陸から1カ月。首都圏では、その巨大な構造から“地下神殿”とも呼ばれる「首都圏外郭放水路」(埼玉県春日部市)が被害を軽減させたとして注目を集めた。実は、大阪にも同様の放水路があり、河川の氾濫による水害から地域を守っている。(井上浩平)

 「酸欠注意」の看板がかかる地上入り口から階段で地下25メートルまで下りると、コンクリートに覆われた巨大なドームのような空間が広がり、直径7メートルのトンネルが口を開けていた。

 大阪府東大阪市の若江立坑(たてこう)。延長13キロに及ぶ「寝屋川南部地下河川」の起点だ。降雨で下水道の処理能力を超えた水を集めて大阪湾近くまで流し、ポンプでくみ上げて川に放出する仕組み。下水に由来する有毒ガスが発生することもあり、立ち入る際は換気が欠かせない。

 昭和56年に工事が始まり、平成23年に東大阪-大阪市阿倍野区間の供用を開始した。最終的に大阪湾に注ぐ木津川河口付近までの2キロをつなぎ、25年後に完成予定。施設を有効活用するため、現在は最大63万立方メートルを貯水し、川の水位が安全なレベルまで下がれば放出する「調節池」として使用している。

 地下河川は、北の淀川と南の大和川、東の生駒山地と西の上町台地に挟まれた寝屋川流域に造られている。南部地下河川と別に延長14キロの「寝屋川北部地下河川」があり、総事業費は合わせて約3660億円となっている。

 府寝屋川水系改修工営所によると、寝屋川流域は大部分が大阪湾と高さがほぼ同じ低平地。このため、周囲の土地よりも高い「天井川」の淀川、大和川の両河川に、雨水が自然に流れ込んでいかない。結果、雨水の出口が寝屋川の1カ所に集中し、さらに一帯の都市化で保水・遊水機能が低下していることもあって、寝屋川流域では浸水被害が繰り返されてきた。

 こうした経緯から、流域では地下河川を活用しながら、河川改修や貯留施設の整備などを合わせた水害対策を実施。西日本各地に被害が出た昨年7月の豪雨では、2つの地下河川と周辺施設で208万立方メートルの水を貯留した。同程度の雨量があった平成7年の7月時は流域の2040戸が床上・床下浸水したが、昨年7月は数戸にとどまったという。

 同工営所建設課の横江一雄課長補佐は「総合的な治水効果で、昔と比べると水害は減っている」とする一方、「近年は大型台風やゲリラ豪雨もあり、雨の降り方によっては浸水の恐れもある。非常時は命を守る行動を取ってほしい」と話した。

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