憲法改正 かつての草案にこだわる石破氏 自身の主張に固執し展望開けるのか

【政界徒然草】

 自民党の石破茂元幹事長が憲法9条への自衛隊明記などを盛り込んだ党の「改憲4項目」に背を向け続けている。党執行部は9月の役員人事で、党の改憲議論のエンジン役となる憲法改正推進本部の要職に石破派の中堅議員を起用し、身内の切り崩しも進めた。それでも石破氏は野党時代の平成24年に策定した党の憲法改正草案の正当性に執着し、変化の兆しをみせない。

 「改憲4項目と平成24年に党議決定した党改憲案(党の憲法改正草案)はどういう関係に立つのか。整理しないと時間を空費する。野党の時だったから、といえば野党の言うことなど誰も信用しなくなる」

 「(平成30年3月の)党大会で、改憲4項目が承認されたという人がいるが、承認の拍手や起立を求められたことはなかった。党議決定はそれなりの手続きが必要で、わが党はそういうプロセスを経て今日まである政党だ」

 石破氏は10月11日、党憲法改正推進本部の会合で、持説をまくし立てた。会合には二階俊博幹事長や岸田文雄政調会長らが出席し、挙党態勢で憲法改正に臨む姿勢をアピールする場だったはずだが、石破氏の発言は異彩を放っていた。

 石破氏は安倍晋三首相(党総裁)と同じく憲法改正を宿願とするが、プロセスの考え方は異なる。

 首相は9月の内閣改造後の記者会見で「自民党のたたき台(=改憲4項目)は党大会で承認され、党としての意思となっている」と強調した。一方、石破氏は改憲4項目は党総務会の了承を経ておらず、24年に自身が主導してまとめた党憲法改正草案が有効だとする立場に固執する。

 24年の草案では、戦力不保持と交戦権を否定した既存の9条2項を削除し、集団的自衛権行使を全面的に容認する姿勢を打ち出していた。改憲4項目の9条改正案では、既存の9条をそのまま維持したうえで、自衛隊の存在を明記する。石破氏は「自衛隊は立派な戦力で、そのまま明記すれば戦力不保持の9条2項と整合性がとれない」と反発している。

 推進本部会合で自説を曲げようとしない石破氏に、党幹部はため息を漏らす。

 「石破氏はずっと同じ姿勢だ。ああいうことを言われると『自民党だってバラバラじゃないか』と野党に言われるんだよ…」

 自民党内の足並みを乱す石破氏の言動を利用しようとする野党議員も出始めている。

 11日の推進本部会合から数時間後、国民民主党の前原誠司元外相は衆院予算委員会で、石破氏の主張をなぞるように首相を牽制した。

 「自民党の憲法の考え方はどれなのか。4項目は総務会決定はなされていないと承知しているが、自民党の考え方はどちらなのか」

 国民の玉木雄一郎代表も9日の記者会見で「自民党の改憲4項目は本当に自民党の案なのか。石破氏が疑問を呈す発言もしている。与党側もしっかりと固めてもらいたい」と苦言を呈した。

 石破氏の批判を緩める狙いもあったのか。自民党は9月の人事で推進本部の体制も見直し、事務局長に山下貴司前法相、副本部長に斎藤健元農林水産相と、いずれも石破派(水月会)の議員を起用した。

 山下、斎藤両氏が当選3回の若さでそれぞれ入閣した際には、安倍首相による「石破派の分断作戦」(石破派幹部)との見方もあったほどだ。

 石破氏はいつまで党の憲法改正議論に異論を唱えるのだろうか。党幹部は、改憲4項目は与野党の膠着した改憲議論に風穴を開けるための「呼び水」の役割を期待している。

 ただ、野党側が石破氏の発言を利用して「まず党内不一致の解消を」と訴え、改憲議論をする場となる国会の憲法審査会の開催を渋るような事態になれば本末転倒だ。

 何より、石破氏は憲法改正が争点の一つとなった昨年9月の総裁選で首相に敗れている。石破氏の主張に理解を示す向きもあるが、党内では「総裁選で党としての立ち位置は決着したはずだ」(党幹部)との声が大半だ。「ポスト安倍」を目指す石破氏は、自身の主張に固執して展望が開けるのだろうか。(政治部 奥原慎平)

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