公明・赤羽国交相起用でうごめくポスト山口代表レース

【政界徒然草】

 公明党が山口那津男代表(67)の後継候補育成に動き出した。19日の中央幹事会で、石井啓一前国土交通相(61)を幹事長代行に起用することが決まった。将来の「党の顔」となることを見据え、要職で実務経験を積ませる狙いがある。石井氏の後任である赤羽一嘉国交相(61)を起用した裏には、党勢拡大の思惑も見え隠れする。

石井氏を党務で「育成」

 「幹事長代行は、党運営の実務を幹事長とともに担う重要な立場だ。これまでの閣僚経験を生かしてもらいたい」

 山口氏は19日の中央幹事会後、記者団に石井氏を幹事長代行に据えた狙いをこう説明した。歴代最長の3年11カ月にわたり国交相を務め、党務に復帰した石井氏の処遇は、今後の党体制の方向性を暗示する。

 旧建設省出身の石井氏は平成5年に衆院初当選。財務副大臣や党政調会長を歴任し、国交相としても手堅い仕事ぶりが評価されてきた。

 今回の閣僚交代は在職期間が長すぎるという理由だけではない。石井氏は党の要職経験が十分といえず、支持母体である創価学会の幹部は「『ポスト山口』の1人として育成モードに入った」とみる。

 こうした見方の背景に、山口氏が今月8日で代表就任から10年を迎え「明確な次期代表候補がいない」と懸念される事情がある。来年秋に執行部人事を決める党大会が控えていることも影響している。

 21年衆院選で落選した太田昭宏前代表の後任として急遽(きゅうきょ)「党の顔」に就任した山口氏は、もともと2年衆院選で国政に進出した。執行部を固める井上義久(72)、北側一雄(66)の両副代表や石田祝稔(のりとし)政調会長(68)も「平成2年組」だ。

 5年初当選の太田氏は10月に74歳となるため「任期中に69歳を超える場合は原則公認しない」との党の定年制に従い、次期衆院選で東京12区から出馬しないことが決まっている。

 山口氏とともに、学会青年部出身の太田、井上両氏らが屋台骨を支えてきた指導体制は転換期を迎え、世代交代が進みつつある。

 こうした中、新たに国交相に就いた赤羽氏は内閣改造当日の11日、「現場第一主義が私の信条」と強調した。翌12日にはさっそく台風15号で被災した横浜市内を視察した。

 赤羽氏は商社勤務を経て5年に衆院初当選。衆院国土交通委員長や財務副大臣を経て、第2次安倍晋三内閣で経済産業副大臣を務めた。安倍首相とは初当選同期で、公明党の現職国会議員の中では特に親しい。

 一方、ラグビーの全日本高校選抜にも選ばれたラガーメンで、党執行部批判も辞さない「武闘派」として知られる。率直な物言いが煙たがられ、改造前は入閣候補の「大穴」との見方が強かった。党幹部を経験せずに抜擢(ばってき)されたこともあり「サプライズ人事」と受け止められた。

 山口氏は赤羽氏起用の理由を「若い世代に積極的に活躍してもらう」と説明する。ただ党内の陣容を見渡すと、苦しい事情もうかがえる。

党勢退潮に危機感

 党や学会の関係者によると、当初、石井氏の後任と有力視された石田氏は68歳という高齢に加え、連立を組む自民党の岸田文雄政調会長との関係継続が重視され、留任したとみられる。

 5年初当選組をみると、高木陽介氏は昨年、国対委員長に就いたばかり。政策通で知られる上田勇氏は29年衆院選で落選し、今は国政の場にいない。有資格者から選抜した結果、安倍首相と良好な関係にある赤羽氏に白羽の矢が立ったとみることもできる。

 国交相は道路や運輸、建設、観光など国民生活に身近な幅広い分野を担う。今後は「ポスト山口」候補とともに、公明党唯一の閣僚としても有権者への発信力を期待されている。党は最近の国政選挙の結果を踏まえ、党勢拡大を「根源的な課題」と捉えているためだ。

 公明党の比例代表得票数は28年参院選で757万票だったが、29年衆院選は697万票に落ち込み、今年7月の参院選では653万票とさらに減った。

 参院で過去最多の28議席を獲得しながら「票を増やすのは党の重要な役割だ。中核支持層周辺の有権者に投票してもらえるよう活動を強化する」(党幹部)と危機感は強い。

 公明党はこれまで安倍政権との親和性が高くないリベラル勢力を取り込み、政権の安定に貢献してきた。しかし、集団的自衛権の限定的行使を容認した27年の安全保障関連法成立を機に、支持層の一部が離反している。

 学会幹部は「右派も左派も関係なく、公明党持ち前の弱者目線で政策を発信できるかどうかだ」と語る。新たな陣容で党勢拡大につなげられるかは今後の取り組みにかかっている。(政治部 清宮真一)

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