40年前の“呪縛”で「報酬21万円」 なり手不足が深刻、町村議会は生き残れるか

【政治デスクノート】

 町村議員のなり手不足が深刻だ。その理由の一つに低水準の議員報酬が挙げられる。全国町村議会議長会の「町村議会議員の議員報酬等のあり方検討委員会」が31年3月にまとめた報告書によると、町村議員の平均報酬月額は約21万円。専業議員として活動するのは難しく、兼業しようにも規定があるため、町村議員のなり手が限られているという。

 平成29年、高知県大川村が村議会を廃止して住民が直接議案を審議する「村総会」の設置を検討していることが分かり、町村議員のなり手不足がクローズアップされるようになった。

 大川村は今年4月、打開策として、村民が立候補しやすい環境を整えるため、議員との兼業が可能な団体名を毎年度公表する条例を施行した。同月の統一地方選にあわせた村議選では定数6に対して7人が立候補し、8年ぶりの選挙戦となった。

 地方自治法は92条で「兼職禁止」や「請負禁止」を定める。地方議員は自治体職員や他の自治体議員、国会議員などとの兼職を禁止され、当該自治体と経済的、営利的な取引関係に立つことも禁止されている。規模が小さい自治体は人口が少なく、事業所数も限られ、何かしらの形で役所と取引関係がある場合が少なくない。「兼職禁止」や「請負禁止」の規定で、立候補を断念したり、躊躇(ちゅうちょ)したりするケースがある。

 茨城県美浦(みほ)村でも村議のなり手不足から、3月、統一選の村長選に村議選の日程を合わせるため、8月31日までの任期を5カ月余り残して村議会を解散した。27年8月の前回村議選が無投票となり、批判が起きたための措置だったという。

 地方議員のなり手不足に国も動いた。

 総務省が立ち上げた有識者研究会は昨年3月、少数の専業議員が参加する「集中専門型」、兼職・兼業制限を緩和して多くの議員が参加する「多数参画型」という新たな町村議会モデルを提言した。これに対し、全国町村議会議長会などが「地方分権改革に逆行する」と国の“介入”に反発。総務省は新たな研究会を発足させ、議論を仕切り直した。

 「町村議会議員の議員報酬等のあり方検討委員会」の報告書によると、29年の町村議員の平均報酬月額は21万3726円で、町村長の給与71万7845円の3分の1ほどだ。町村議員の報酬は、この「3分の1」が相場となっている。

 全国町村議会議長会は、昭和53年に提案した「議員報酬のあり方」で、議員の議会や調査研究など活動日数と、首長の活動日数を比較し、その割合に首長の給料月額を乗じて議員報酬を割り出した。その水準は、首長の給料の「30%ないし31%」と結論づけられ、この40年以上前に打ち出された基準がいまの町村議員の報酬水準につながっている。若年層、中年層が町村議員として活動することを考えれば、改善の余地はあるだろう。

 とはいえ、地方議会に対する有権者の視線は厳しい。

 住民の声を反映し、身近な暮らしを守る地方議会だが、その役割や機能は住民に見えづらく、一部議員による政務活動費の不正受給も明らかになった。行政改革が不断の努力とされている中で、町村議員の報酬増額をはじめ、年金などの待遇改善を訴えても、すんなりと有権者の理解を得るのは難しい。

 4年に1度実施される統一地方選で、改選定数に占める無投票当選者数の割合は、31年で都道府県議選が26・9%、町村議選で23・3%に上った。4人に1人が無投票で当選している事態は、深刻に受け止めなければならない。

 議員報酬の増額が、真に必要な「民主主義のコスト」であるのか。現職議員の焼け太りと疑われてしまえば、元も子もない。ただ、このまま指をくわえたまま何もしなければ、地方議会は消滅しかねない。(政治部次長 峯匡孝)

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