ハンセン病 首相、法律論を超え談話 参院選と一線

 安倍晋三首相は、平成13年5月のハンセン病元患者本人をめぐる熊本地裁判決で控訴しなかった小泉純一郎首相(当時)にならい、首相談話で「おわびと反省」の意を示した。手法は前例踏襲ではあるが、患者や元患者、その家族が強いられた経験を「筆舌に尽くしがたい」と強い言葉で表現し、おわびの部分も小泉談話にはなかった「心から」という言葉を加え、国の不作為による差別被害を全面的に認めた。

 今回の熊本地裁判決をめぐっては、首相官邸や法務省、厚生労働省をはじめ政府内で「控訴すべきだ」という意見が大勢を占めていた。安倍首相が控訴を見送る考えを表明した9日の前日の時点でも、政府高官は周囲に「到底受け入れられる判決ではない。控訴しないことはあり得ない」と断言していた。

 特に、民法で定める損害賠償請求権の時効が消滅する起算点については「国民の権利・義務関係への影響があまりに大きい」(政府声明)ため、控訴を見送るには法的にハードルが高かった。政府声明で今回の熊本地裁判決に反論し、法律論では争いがあることを明示する必要があったのは、そのためだ。

 首相談話は「法律論を超えた首相の心情を込めた」(官邸筋)表現にこだわった。首相は近く家族と面会して謝罪するとともに具体的な救済策の検討に入る。控訴見送りの表明が参院選と重なり、一連の対応が選挙戦を有利に運びたい戦略と見なされるのを避けるため、首相サイドは一線を画す姿勢に徹している。

 補償対象の範囲や差別の認定方法など立法措置に向けた課題は山積している。政府関係者が「選挙戦とは関係なく、できることから着手する」と話すのは当然であり、遅滞は許されない。(小川真由美)

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