わずか1日に終わった改憲議論、止めているのは誰か

【政界徒然草】

 6月26日に閉会した通常国会では、衆参両院の憲法審査会がほとんど開かれず、改憲議論は行われなかったに等しい。誰が議論を止めているのか。主張は与野党で食い違う。7月4日に公示された参院選は、改憲議論に臨む各党の姿勢のあり方が争点の1つになる。

 6月30日のインターネット中継動画サイト「ニコニコ動画」の党首討論会は、この問題で紛糾した。

 立憲民主党・枝野幸男代表「(憲法改正を問う国民投票運動時の)CM規制について、さらに参考人を呼んで議論を進めましょうという話を拒否しているのは与党だ」

 <現行の国民投票法には賛否を訴えるCM費用の上限規制がない>

 安倍晋三首相(自民党総裁)「私が聞いているのはまったく違いますね。私たちはCM規制についても議論したいと考えている」

 枝野氏「え!それは嘘の報告を受けていますよ」

 司会「枝野さん、国会と違ってやじはやめて…」

 首相「私たちは(自民党独自の改憲案を)お示ししているのだから、反対なら反対の議論をしていただきたい。国民からすると何をやっているんだという感じだと思う。それぞれの考え方を示して議論すればいい」

 枝野氏「国民投票法の改正(案)について自民党から採決を求められている。食い逃げしてこちらの(CM規制に関する)議論はしないで進められてしまうと疑わざるを得ない」

 日本維新の会・松井一郎代表「憲法審査会なんですから、各党が『この条文を変えよう』と持ち寄って、横並びで議論すればいいじゃないですか」

 枝野氏「(与党が)採決しろと言っているから、議論しないで…」

 司会者「枝野さん、ちょっとよろしいですか。発言は…」

 松井氏「枝野さんは全く(議論を)やらないと聞いていますからね。やじはやめてください」

 各党首の主張はかみ合わなかったが、実際にどのような経緯で憲法審査会の議論は停滞しているのか。

■枝野氏が採決認めず

 憲法審査会は、衆参で週1日ずつの開催定例日を設けている。先の通常国会では、予算審議や大型連休中を除いた憲法審査会開催が可能な定例日が、衆参それぞれ15~16日前後あった。それにも関わらず改憲議論は衆院で1日、2時間程度行われただけで、参院はゼロだった。衆院の2時間は国民投票運動時のCM規制に関する参考人質疑であり、憲法本体の議論を行う自由討議はこの1年5カ月、開かれていない。

 最大の原因は衆院憲法審で、継続審議となっている国民投票法改正案の取り扱いをめぐる膠着(こうちゃく)が続いていることにある。

 改正案は、駅や商業施設への共通投票所設置など、国民投票の利便性を国政選挙や地方選挙と同じ内容にそろえる「制度の整備」に過ぎない。与野党とも改正内容には異論ない。

 このため、衆院憲法審査会の与野党幹事は改正案について「質疑・採決した後、野党側が要求しているCM規制の議論に速やかに移る」ことで大筋合意した。だが、最終的に枝野氏が採決の許可を出さず、この合意はほごにされ、改正案の採決もCM規制の議論も見送られた。枝野氏の「採決認めず」の決定により憲法審査会が止まったという点は、与野党とも認識は同じだ。

 もちろん枝野氏にも言い分はある。現行の国民投票法を変えず、政党や団体の資金力によりCM量に差が出れば、国民投票の公平性が損なわれるという懸念がある。この問題について憲法審査会で議論を重ね、解決しない限り、同法の改正案は採決すべきでない-と主張している。

 ただ、「投票の利便性向上」と「運動時のCM規制」は別のテーマだ。すでに審議入りし、与野党ともに内容に賛成する改正案(投票の利便性向上)をまず採決し、その後にCM規制の問題も含めた自由討議を行う-。これが自然な段取りだろう。自民党もCM規制の議論に応じると表明しているのだから。

 審議拒否を武器にした日程闘争は、国会で常態化している。とはいえ、5か月間の通常国会会期中、衆参を通じて参考人質疑が1度行われただけで憲法本体の議論はゼロという憲法審査会の現状は異常だ。言論の府の責任を放棄している。(政治部 田中一世)

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