地図に有権者データ、推計所得も…参院選で最新手法

 令和初の国政選挙となる参院選では、その選挙活動でも最新の手法の導入が本格化しそうだ。家族構成から推計所得まで、有権者のデータを分布として地図上に落とし込み、選挙区内の状況を分かりやすく視覚化。地区ごとのニーズを的確に分析し、よりピンポイントにエリアに応じた政策を訴える手法だ。背景には組織選挙を担う企業や町会などの弱体化がある。

 パソコンに写し出された選挙区の地図。ところどころに大きさが異なる白い円が表示されており、認可保育園の立地箇所にはマークが付けられている。円が大きい場所ほど待機児童数が多いことを示しており、エリアごとの施設の過不足が一目で分かる。各年のデータと比較すれば、今後の予測も立てやすくなる。

 「候補者も有権者も印象で保育園が足りないと思い込み、施設の供給過多になってしまうケースがある。けれど、こうしたデータがあれば的確に分析できる」

 一律的ではなく、より絞って政策を訴えられる。東京都板橋区の坂本東生(あずまお)区議(40)=自民=はシステムの利点をそう説明する。

 今春の自身の区議選では地区ごとに異なる政策ビラを作った。子育て家族世帯の流入が多い新しい住宅地では教育施策や通学路の安全などを重点的に訴え、高齢化率が高いエリアではコンビニ誘致を手始めに若い世代の流入促進を提言。街頭演説の音量についても住民の年齢層に応じて調整するなど、データをフル活用した。

 こうした選挙戦の結果、坂本氏は前回選挙の1・5倍の得票で再選。その功績から、今回の参院選では候補予定者の選挙対策本部に登用された。

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 この手法は、位置情報付きの統計データを地図と組み合わせられるGIS(地理情報システム)を活用したもので、民間では既に企業が店舗の出店計画などを立てる際に使っている。

 年齢別や性別の人口、昼間人口、住民が持ち家か借家か-など、国や自治体が細かい地区ごとに公開しているデータを使用。また、独自のアンケートや調査会社によるデータなど、あらゆる情報を必要に応じて組み合わせることができる。

 細かい地区ごとに公開されていない住民の所得層についても、納税や固定資産などの関連データから多角的に推計し、活用されるケースもあるという。

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 「よりピンポイントな有権者への訴えかけ」という点では、2016年の米大統領選で“過熱”した事例があった。データ収集・分析会社が、視聴番組、カード購入記録、サイトの閲覧記録など、ありとあらゆる有権者の情報を買い集め、支持傾向を分析。会員制交流サイト(SNS)で、相手に応じたメッセージを送った。トランプ陣営勝利の立役者とも言われる同社だが、SNSで入手した個人情報を規約に反して選挙で使用した疑惑が発覚し、廃業の憂き目にあった。

 日本ではそこまでの状況になっていないが、従来の組織型選挙が特に都市部では難しくなり、より直接的に有権者に訴える必要性が強まっているのは確かだ。

 参院選でもGISを活用したアドバイス業務を行う選挙コンサルティング「ジャッグジャパン」(東京)の担当者は、「選挙活動の中心だった職場や町会の結びつきは今や崩壊している。一人一人の支持をどのように、しっかりと固いものにするかが大切になってくる」としている。(福田涼太郎)

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