自民・石破氏誘う国民民主党の窮状 野党の首領に「今は無理でも将来は」

 【政界徒然草】

 自民党の石破茂元幹事長に対し、野党から合流を促す動きが出ている。特に国民民主党は深刻な支持率の低迷に悩むだけに、論戦力も知名度も高い石破氏はのどから手が出るほど欲しい存在だ。石破氏は離党を否定するが、過去には自民党を離れて新党結成に参画したこともある。政権交代を実現するには石破氏を含めた自民党の切り崩しが必須との指摘も多い。自民党内で孤立を深める石破氏に熱いまなざしが向けられている。

 5月中旬、国民民主党の玉木雄一郎代表の後見人を自任する亀井静香元金融担当相は、東京・赤坂の行きつけの料亭「外松」で玉木氏と石破氏を引き合わせた。亀井氏は、自民党内で存在感が低下している石破氏に奮起を促したという。

 亀井氏の持論は、石破氏を中心とする自民党のグループと玉木氏のグループを合流させ、自民党に対抗する勢力を作ることだ。亀井氏は2月24日付産経新聞のインタビューで、玉木氏に「首相指名選挙で石破氏に勝手に投票すれば自民党は割れる」という、政界再編を起こすための戦術を伝えたと明かす。

 国民民主党に加わった元自由党代表の小沢一郎氏も5月14日のBS番組で、亀井氏の考えについて「一つの戦術としてはあり得る」と同調してみせた。

 石破氏に共感を抱く旧民主党系議員は少なくない。

 昨年9月の自民党総裁選では、他党ながら玉木氏や国民民主党の大塚耕平共同代表(当時)らが相次いで石破氏への支持を表明した。旧希望の党が平成29年の衆院選を戦った際には、国会での首相指名候補の1人に自民党の石破氏が浮上したこともある。国民民主党の渡辺周元防衛副大臣らも民進党時代、石破氏と時折、安全保障に関する勉強会を開いていた。

■待望論の三つの要因

 石破氏が人気を集める理由の一つが論戦力だろう。旧民主党の松井孝治元官房副長官は昨年8月28日、自身のフェイスブックで、石破氏について「野党勢力待望の中軸になられては。野党第一党の党首になれば、国会論戦に緊張感が戻るのではないかと真剣に期待する」と投稿した。

 石破氏が安倍晋三政権に異論を辞さない姿勢をみせることも、野党には親和性が高い。国民民主党の若手議員は「プロの野党議員として石破氏と一緒に安倍政権に対峙(たいじ)したい」と語る。

 もう一つの理由が、深刻な支持率低迷に悩む国民民主党の現状だ。党内のベテラン勢からは「国民民主党は参院選後に立憲民主党へ吸収されるだろう。自民党が割れない限り、政権交代可能な野党勢力は作れない」と異口同音に漏らす。

 また、当選4回の玉木氏を始め、国民民主党には当選回数の少ない議員が多い。閣僚や政権与党の要職を長年務めた石破氏に、経験値の低さを補完してもらう狙いもあるようだ。

 野党が秋波を送るのは、石破氏が自民党内で求心力を落としている足元を見ているという一面もある。

 石破氏は、安倍首相に挑んだ昨年の総裁選で、スローガンに「正直、公正」を掲げた。これが「安倍首相への個人攻撃」と批判を浴び、石破氏や石破派(水月会)は内閣改造や党役員人事で冷や飯を食わされた。

 今年3月には若手議員が石破派を退会した。派の人数は石破氏を入れても総裁選の立候補に必要な20人に届かない19人に落ち込み、自民党内での存在感は衰える一方だ。

 その一方で、石破氏は立憲民主党の山尾志桜里衆院議員と憲法講演で同席したり、国民民主党の前原誠司元外相と鉄道番組で共演するなど、野党議員との人脈は維持している。

■タッグ実現の見通しは霧中

 もっとも、石破氏に離党の意志はない。5月21日のBS番組で自民党離党の可能性を問われ、「自民党は野にあるとき、谷垣禎一総裁(当時)のもと、こんな党になりますと徹底的に反省し、党の綱領も変えた。その自民党を作るのが私の使命だ」と一蹴した。

 石破氏は平成5年、自民が下野した際に離党し、小沢氏らと新進党を結党した。しかし、新境地で小沢氏との安全保障観の違いが分かったといい、9年に自民党に復党した。石破氏は当時の判断について「青い鳥はいなかった…」と表現し、離党の過去を悔いる。

 仮に石破氏が玉木氏らと合流しても、石破氏が複数の自民党議員を連れ出すという亀井氏の構想は実現しそうにない。自民党は衆参両院で過半数を超える勢力を保持し、安倍内閣の支持率も高水準を維持している。石破派のベテラン議員は「石破氏が野党と合流しても、誰もついていかないだろう」と語る。

 ただ、こうした石破氏らの態度は国民民主党も織り込み済みだ。

 同党の関係者は「低迷するわが党は石破氏を受け入れられる状況にない」としつつ「政局は変わり得る。石破氏の頭の片隅に、われわれと一緒になれるという選択肢を刻むことが大事だ」とも語る。

 石破氏が政界を揺り動かす日は来るのか来ないのか。(政治部 奥原慎平)

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