二階幹事長、参院選へ全国行脚 なぜか岸田派関係先に集中

 【政界徒然草】

 夏の参院選を目前に控え、自民党の二階俊博幹事長が全国行脚を本格化させている。勝敗を分ける改選1人区のなかでも、山形や滋賀、秋田などとりわけ激戦が予想される地域に入り、自民党の支持団体や経済界の関係者を回って頭を下げた。これらの選挙区には、いずれも二階派(志帥会)と衝突を繰り返した岸田派(宏池会)の候補が出馬するが、二階氏は気にするそぶりを見せない。党を勝利に導けば、幹事長として今秋以降、4期目の続投の目も出てくるからだ。

 「必ず勝利をするという自信を持って、ことに臨んでいきたい」

 二階氏は10日の記者会見で、参院選に向けた決意をこう力説した。

 今回、改選を迎える現職が当選した平成25年の参院選は、自民党が政権奪還した直後に行われた最初の大型国政選挙で、同党は65議席を取り、大勝した。

 当時は32の改選1人区で与党候補が29勝2敗と圧勝したが、主要野党が1人区で統一候補をそろえた28年参院選では、野党が11勝をあげている。今回も野党は1人区すべてで候補を一本化した。

 安倍晋三内閣の支持率は50%前後と堅調に推移しているとはいえ、10月には消費税率の10%引き上げを予定するなど、与党は厳しい政策も抱えている。6年前に「これ以上できないほど議席を取った」(閣僚経験者)反動も見込まれるだけに、自民党は今回、厳しい戦いを強いられるとの見方もある。

 党の陣頭指揮を執る二階氏は、早い段階から選挙戦に向けて動き出した。3月には山形、5月には滋賀、秋田に立て続けに入った。3選挙区で自民党から出馬する山形の大沼瑞穂(40)、滋賀の二之湯武史(42)、秋田の中泉松司(40)の3氏は、いずれも岸田派に所属する。

 二階派と岸田派は、派所属議員の選挙区をめぐって衝突するケースがたびたびあった。1月に無所属のまま二階派入りした細野豪志元環境相の地元・衆院静岡5区は、岸田派の吉川赳衆院議員が自民党の公認候補で、岸田派は二階派の動きに反発を強めた。

 同月の山梨県知事選では、二階派に所属する長崎幸太郎知事が岸田派の堀内詔子衆院議員の協力を得て勝利したが、両氏はそれまで約10年にわたり、地盤の衆院山梨2区で激しい保守分裂抗争を繰り広げた。

 二階氏が派閥間のわだかまりを乗り越えて、岸田派候補者の選挙区に真っ先に応援に駆けつけるのは、1人区が党全体の勝敗の鍵を握るからだ。特に東北6県は、中泉氏の地盤の秋田以外の5県で、自民党は野党系候補に敗れている。

 自民党は昨年末、今回の改選1人区を「激戦区」「警戒区」「安定区」に3分類した。当初、激戦区に指定したのは28年参院選で敗れた山形や青森、岩手など11選挙区にとどめていたが、情勢の変化などを踏まえ、今年4月に秋田や滋賀など5選挙区を追加した。

 二階氏が真っ先に応援に駆けつけた選挙区は、党全体の行方を大きく左右する重要選挙区だ。党関係者は「二階氏は派閥ではなく、党全体の情勢を冷静に見渡して、党が勝つことだけを考えている」と話す。

 特に山形では、過去2回の参院選で自主投票を貫いた農業関係団体の支持を取り付けるため、山形出身の長沢豊JA全農会長に頭を下げ、今回は大沼氏の支持を取り付けた。組織を徹底的に固めて支持基盤を強化する得意の選挙手腕も見せ始めている。

 二階氏が参院選に執心するのは、参院選の結果が「幹事長続投」の試金石となるからだ。

 安倍首相は夏の参院選後に内閣改造と自民党役員人事を行うとみられる。幹事長の任期は1年間だが、二階氏は28年に党幹事長に就任し、これまで3期務めてきた。この間、安倍晋三首相の党総裁連続3選を下支えして厚い信頼関係を築き、29年衆院選を大勝に導いた。しかし、現在は80歳という高齢もあり、党内には交代論もくすぶる。

 二階氏は、決して続投の意欲を周囲に示さない。しかし二階派からは、党内で派の今後の立ち位置なども見据え、「二階氏が幹事長でなければ、党内のバランスが崩れる」などと、続投を望む声もあがる。

 安倍首相は、参院選に合わせて衆院選を行う衆参同日選を見送る方針を固めた。政権選択を問わない参院選単独となれば「政権への中間選挙の色彩を強め、与党への批判票が集まりやすい」(野党幹部)とされる。二階氏が厳しい戦いにどう臨み、その後どのような処遇を受けるか注目される。(政治部 大島悠亮)

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