市民も知らない大阪・四條「畷」の謎

 「正確には、『ヌヌヌ又』です」。全国最年少市長で知られる大阪府四條畷(しじょうなわて)市の東(あずま)修平市長(30)が5月中旬、ツイッターでこんな投稿をした。市名にある漢字「畷」のつくりが、「ヌヌヌヌ」ではなく「ヌヌヌ又」になっているというのだ。市民からは「知らんかった」などと驚きの声が上がり話題になったが、調べていくと意外な“真相”に突き当たった。(小泉一敏)

 東市長のツイートは、府立四條畷高校の生徒らが「畷」の人文字を作った画像に対する感想。同校写真部が「アクロバティックなヌヌヌヌ」と説明したところ、東市長は「おもしろい。ただ、正確には『ヌヌヌ又』です。」と訂正した。同市出身で同校OBでもある東市長は「後輩に親しみを込めてメッセージを送った」と話す。

 東市長によると、自身が高校生の頃には友人らに豆知識として話していたが、「自分がいつ、だれに教わったかは覚えていない」。漢和辞典で調べてみると、確かに「ヌヌヌ又」となっていた。

 では「ヌヌヌヌ」と書くと間違いなのか。日本漢字能力検定協会(京都市)によると、漢検の試験では「ヌヌヌヌ」でも正解。それどころか、「又又又又」でも正解になる。活字のデザインや楷書での書き方の違いに当たるためで、担当者は「正誤を判断する基準にはならない」と話す。

 文化庁の「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」でも、手書きした場合は「ヌ」と「又」のどちらでも問題ないとしている。カタカナの「ヌ」が漢字の「奴(女+又)」に由来することも、両方正解の根拠になりそうだ。

 一方で四條畷市の「ヌヌヌ又」の歴史は、意外と新しい可能性がある。市史などによると、「しじょうなわて」の名称が初めて記録に出てくるのは、南北朝時代を描いた「太平記」の「四條縄手の合戦」。縄手と畷はどちらもあぜ道の意味だが、畷の字が広く使われだしたのは、明治23年に建立された四條畷神社がきっかけだという。

 市教委によると、市内の小中学生は授業で市の歴史は学んでも、畷の字について深く教わる機会はないそうだ。「ヌヌヌ又」に気づいた人は、市民よりも四條畷市に注目しているのかもしれない。

 ■「條」と「条」混在の理由

 四條畷市の地名といえば、これまで「畷」ではなく「條」の字がよく話題になってきた。四條畷警察署(大阪府大東市)やJR四条畷駅(同市)など、表記が混在しているためだ。その背景も調べてみた。

 四條畷市によると、自治体名としては昭和7年に四條畷村が誕生。45年7月1日の市制施行時に、大阪府に「四條畷市」として届けた。ただ、府は常用漢字を使用することを推奨しており、同年6月3日付の公報には「四条畷市」として記載。保健所や府立高校など、府の施設には「条」が使われることになった。

 一方で府は、当時の自治省に「四條畷市」として届け出を行ったとみられ、国は「四條畷市」として同月25日付の官報に記載。どちらも正しい地名とされる要因となった。

 転機となったのが平成15年、当時の市長が、市民に長年親しみのある「條」の字を使用することを求める要望書を府に提出。翌16年4月から「條」に統一することに決まったという。ただ、JRの駅は駅名変更に自治体の費用負担が必要なため、現在も「条」が使用されている。

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