ステルス機F-35をつかさどる「気難しいアリス」

【軍事ワールド】

 航空自衛隊三沢基地(青森県)の最新鋭ステルス戦闘機F-35Aが4月9日に青森県沖合の洋上で墜落してから1カ月以上が経過した。同機は米国を中心に9カ国による共同開発で多くの国が採用しているため、墜落原因に注目が集まっているが、不明のままだ。ただ、墜落原因以上に海外で問題視されているのが、F-35の運用に欠かせないプログラム「アリス」の不具合だ。(岡田敏彦)

 ■飛行停止をめぐって

 F-35は新鋭機としては極めて事故が少ない機体だが、ゼロというわけではない。2010年には操縦士(パイロット)が気を失い墜落する事案が発生。調査の結果、酸素供給装置の不具合だったことが判明しており、2018年までに少なくとも29件の低酸素症の事例があったという。

 また最近では昨年9月、海兵隊向けの短距離離陸・垂直着陸が可能なF-35Bが米国内で墜落した。この際は米軍がF-35を採用する全ての国、軍に飛行停止措置を連絡。調査の結果、エンジン内部の燃料管に製造過程での欠陥がみつかり、同じタイプの燃料管を組み込んでいた117機全てで交換した後、飛行を再開している。

 しかし今回の自衛隊所属機の事故後も、米軍ではF-35の飛行停止措置を行っていない。英国も今月21日、空軍第617飛行隊のF-35Aを初の海外遠征訓練に送り出している。行き先はギリシャのアクロティリ基地で、その移動距離を考慮すれば、機体に故障の不安を感じていないのは明らかだ。

 ■問題は日本固有?

 墜落した空自のF-35Aは、部品を輸入し日本で最終組み立てを行った「初の国内組み立て」の機体で、日本で組み立て後は米国側の検査を受け、その後米本国まで運び、さらに検査を受けるという徹底した品質管理を受けていた。一方で冷却系統や航法装置の不具合で2度、予定外の着陸を行っている。米英など外国で飛行停止措置を取らないのは、こうした海外勢が、事故原因を、「日本特有の何か」だと判断している可能性は否定できない。

 また、近年の軍用機は自己診断システムを持っており、不具合にまでは至らない数値なども整備で明らかになる。これらの情報は、F-35の場合は地上の支援コンピューターとやりとりが行われているとされ、事故機の場合もデータが地上側に残されている可能性がある。こうした極秘のデータを分析した結果が諸外国での「飛行停止はしない」との根拠になっているとの推測もできなくはない。

 だが、諸外国の軍では、この地上側こそを問題視しているのだ。

 F-35では専用の自律型兵站(補給)情報システム「Autonomic Logistics Information System」、略してALIS(アリス)と呼ばれるシステムがある。米外交専門誌ナショナル・インタレスト(電子版)は5月中旬、このシステムの不具合を報じた。見出しのひとつは「不思議の国のアリス」だったが、現場の実際は不思議というより、不具合と形容すべきものだった。

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