与党、丸山氏への懲罰動議を模索か 「女性の店へ」発言発覚で事態一変
北方領土を戦争で取り返す是非に言及し、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員(大阪19区)への対応について、与党が頭を悩ませている。失言が即座に議員辞職勧告決議案につながる先例作りを避ける思惑も働き、反省を促す「譴責(けんせき)決議案」にとどめたが、その後、丸山氏が現地で「女性のいる店で飲ませろ」などと暴れていたことが発覚。与党もバツの悪さは隠せず、最高で除名まである「懲罰動議」を模索する声も出始めた。
■「失言即議員辞職」の先例化恐れ
自民党の二階俊博幹事長は21日の記者会見で「(議員の身分を)一刀両断することには慎重であるべきだ」と強調。公明党と協議したうえで、与党として譴責決議案を共同提出した。
丸山氏への対応は、与野党で大きく異なっている。
丸山氏を除名処分とした日本維新の会を含む野党6党派は、「暴言は限度を超えている」(立憲民主党)などとして、衆院に議員辞職勧告決議案を共同提出した。与党にも同調するよう呼びかけたが、与党側は拒否した。同決議案はこれまで、主に有罪判決を受けたり逮捕・起訴された議員に出され、個別の発言を理由とするのは異例なためだ。
自民党では、4月に塚田一郎元国土交通副大臣と桜田義孝前五輪相が相次いで失言で辞任した。党内には発言に不安を抱える議員が少なくない。同決議案に同調し、可決された場合、決議案が失言をした閣僚らに対する野党の追及材料となる懸念もあった。
■議長許せば「懲罰」可能
与野党それぞれが提出した決議案は衆院議院運営委員会でたなざらしになる可能性もあったが、事態は22日に急変した。丸山氏が「戦争」発言をした際、大声で「女性のいる店で飲ませろ」などと語り、禁止されている宿舎からの外出を試みたことなどが判明したのだ。
関係者によると、丸山氏は「俺は日本の国会議員で不逮捕特権がある」などと話し、政府関係者が玄関先で羽交い締めにして止めたという。
衆院議運委理事会は24日に丸山氏を事情聴取することを決めたが、丸山氏は当日「体調不良」を理由に欠席。同委には、2カ月間の休養が必要との診断書を出した。
今国会の会期は6月26日まで。今年は夏に参院選があり、大幅な会期延長が難しいことを考えると、診断書に従って丸山氏の「回復」を待っていたら、国会は閉会してしまう。
与党の国対幹部は「丸山氏から一度話を聞かなければ、辞職勧告なのか譴責なのか、決議案の協議をスタートできない」と語る。ただ、別の自民党関係者は「(与党が譴責)決議案を出してから本人を聴取するのは、容疑者を逮捕してから証拠を集めるのと同じだ」と述べ、譴責決議案を提出する前にきちんと事情を聴くべきだったと悔やむ。
そもそも、丸山氏は北方領土へのビザなし訪問団として、国会を代表して派遣された衆院議員だ。旅費には税金が使われている。
長年苦労を重ねた元島民に泥酔して絡み、ビザなし渡航に関する日露間の申し合わせを破って力ずくで外出しようとした行為は、「戦争で取り返す」という発言の是非を論じる以前に、国会議員としてあるまじき言動だ。「失言したら即決議案」という前例ができることへの懸念とは、別次元の問題になりつつあるとの指摘もある。
北海道議会は丸山氏の発言を批判し、外交による領土問題の解決を目指すことを確認する決議案を全会一致で可決した。根室市議会も抗議決議案を30日の緊急議会で可決する方針だ。
元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟は、丸山氏に「発言やその前後の行動は常軌を逸したものであり、極めて遺憾」とする抗議文を送っている。
与党内では、丸山氏への懲罰動議の提出を模索する動きも出始めている。国会法では、問題行動が発生してから原則3日以内の動議提出を期限としているが、この期限を過ぎた場合でも、衆院議長が職権で懲罰委員会を開くことは可能だ。
懲罰には「戒告」「陳謝」「一定期間の登院停止」「除名」の4種類がある。憲法58条2項の規定で、衆院本会議で出席議員の3分の2以上が賛成すれば、国会議員の身分を剥奪する除名処分も可能となる。
国会は6月26日の会期末まで、残すところ1カ月を切った。与野党が「看過できない」と一致する丸山氏の発言に対し、衆院が会期内に院としての意思表示ができるかどうか、難しい判断が迫られている。(政治部 今仲信博)






