【女子の兵法】小池百合子 令和に輝く日本の処方箋

 新しい御代「令和時代」を迎えた。祝福ムードに包まれながら新たな幕が開けたことを喜びたい。

 時代の節目に合わせるように、ベルリンから一通のメールが届いた。「ベルリンの壁」崩壊から30年を迎える今秋に開く記念フォーラムへの招待メールだった。あらためて、わが国の平成時代と冷戦終結後の世界の激動を重ね合わせてみたい。

 東西冷戦の象徴「ベルリンの壁」の崩壊が、ソビエト連邦の崩壊に繋(つな)がり、ヒト・モノ・カネが国境というくびきから解放され、世界中に拡散していった。新たに加わった安価な労働力は数十億人単位で、世界における労働市場は怒濤(どとう)のような変化を引き起こした。

 わが国では平成の最終段階でようやく「働き方改革」に手がつけられたものの、遅きに失したのではないか。開発途上国の人々と、自由世界第2位の経済規模を有する国の人々が、労働時間の長さで競い合うのは不合理だと、もっと早く気づくべきだった。

 ましてや、人工知能(AI)技術は加速度的に進化し、2045年にはAIが人間の知能を超える時代を迎えるという。読解力の強化を含め、教育の質の向上を早急に図らねばならない。教師が「教える」という本来の職に集中できるよう、教育の環境を整える必要もあり、東京都では教員の業務負担軽減のための支援組織を設立準備中だ。

 技術革新による新技術の普及は開発途上国に「後発優位」の状況をもたらした。電話網の構築に多額の費用と長年の時間をかけた先進国だが、急速な携帯電話の普及が基地局の設置だけで開発途上国は情報通信網を手にすることができた。ケニアのマサイ族がすでにキャッシュレス社会を享受していたり、ルワンダでドローンを使い、遠隔地に医療品を届けるニュービジネスが起こっていたり、長年のわが国の真摯(しんし)なアフリカ援助があっという間に上書きされてしまいそうな変化が起こっている。

 それでも、令和時代の日本だからこそ、なすべきこと、なさねばならぬことは多い。課題先進国だからこそ解決策を見いだし、「先発優位」となる「百年の計」を描くタイミングは今、だ。

 超高齢社会に備え、財政や社会保障など未来を見据えた処方箋が必要である。不安を払拭するための国家システムづくりは政府の役割としても、首都・東京が注力すべきはいかにして「人」を活(い)かすか。熾烈(しれつ)さを増す世界の都市間競争を勝ち抜くためにも、その礎となる人材の育成やシニアの経験を活かせる場づくりを進めている。

 いまだ眠る女性の力の活かし方も大きな課題だ。政府は外国人労働者の受け入れ拡大に舵(かじ)を切りながらも、いまだ女性を労働市場の「調整弁」と見なす意識は変わっていない。私は情報通信技術(ICT)やAI導入などによる生産性向上とともに、「女性力」がもっとも活きる東京にしたいと考えている。

 孫子の兵法にある「先(ま)ず勝つべからざるを為(な)して、以(もっ)て敵の勝つべきを待つ」は、超高齢社会の到来というピンチにおいても準備をしっかり整え、チャンスに切り替えることの大切さを教えてくれる。

 いよいよ、来年は東京五輪・パラリンピックを迎える。1964年の東京五輪開催に向けた盛り上がりがわが国の成長に火を付けたように、令和時代に持続可能な成長と成熟の道を一自治体の立場からも創っていきたい。

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