米に「拉致解決」迫られ…北朝鮮、水面下で日本側と接触か 安倍首相の怒りと執念、そして北が示唆した条件とは

 ドナルド・トランプ米大統領は25日から国賓として来日し、安倍晋三首相と首脳会談を行い、北朝鮮の拉致被害者家族とも面会する。トランプ氏は今年2月、ベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、拉致問題解決の必要性を強く迫った。これを受け、北朝鮮側は水面下で日本側に対し、日朝首脳会談に向けた調整を持ちかけてきているという。安倍首相の怒りと執念、北朝鮮側が示唆した条件とは。日米首脳会談では、北朝鮮の動向を分析したうえで、両首脳による「対北通告」を発することもありそうだ。

 「日朝平壌宣言に基づき、拉致や核・ミサイルなどの懸案を解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す考えに変わりはない」「わが国自身が主体的に取り組むことが重要だ」

 安倍首相は16日の衆院本会議で、こう語った。

 北朝鮮は5月に入り、短距離弾道ミサイルなどを複数発射したが、安倍首相は悲願の拉致問題解決のため、怒りを押し殺して、正恩氏と条件をつけずに会談する方針を改めて示した。

 2月の米朝首脳会談で、正恩氏が「日朝間の懸案として拉致問題があるのは分かっている。いずれ安倍首相とも会う」と、トランプ氏に語ったことを受け、日米は情報共有をしながら、北朝鮮対策を進めてきた。

 安倍首相は3月、防衛大学校(神奈川県横須賀市)卒業式で行った訓示で、例年は言及していた北朝鮮問題に触れなかった。日本政府は同月、北朝鮮の人権侵害をめぐり、スイス・ジュネーブで開かれている国連人権理事会に対する非難決議案の提出を見送った。その後、安倍首相は日朝首脳会談の無条件開催を目指すと表明した。

 日米情報当局関係者は「トランプ氏は、米中貿易戦争が激化するなか、北朝鮮を本気で中国から引きはがして、経済復興させようとしている。中国への強烈なカウンターになる。その最低条件が『非核化』であり、『拉致問題の解決』だ。トランプ政権としては、北朝鮮に大規模な経済支援をする気はない。その役割は、かつての宗主国であり、日朝平壌宣言を結んだ日本が果たすことになる。だから、決裂前の米朝首脳会談でも、トランプ氏は『日本と話し合え』と伝えた。北朝鮮側は、複数のルートで安倍首相側に接触している」と明かす。

 実は、日朝のリーダーは現在、呉越同舟に近い状況といえる。

 長年、拉致問題に取り組んできた安倍首相としては、被害者家族が高齢化するなか、早期に被害者を取り戻したい。一方、国際社会の経済制裁に直面し、今年も干魃(かんばつ)が続きそうな正恩氏としては、日本と関係改善して、年内に3度目の米朝首脳会談を行いたいのだ。

 官邸周辺は「北朝鮮側はいくつかの条件を打診してきているようだ。とても飲めない内容もあるが、全体として『日朝首脳会談をしたい』という意欲は感じる」という。

 トランプ氏は来週末、「令和」初の国賓としてメラニア夫人とともに来日する。安倍首相とは首脳会談やゴルフ会談を通じて、今後、北朝鮮とどう対峙(たいじ)するかを話し合うとみられる。

 前出の日米情報当局関係者は、「米国は、巧妙に『アメとムチ』を使い分けている。北朝鮮が『死神』と恐れるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らが強硬姿勢を貫く一方、スティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表などが融和姿勢を見せている。北朝鮮に対し、『貴国は(日米と組めば)高句麗のような国になれる』とも持ち上げたという。高句麗は紀元前1世紀ごろから、現在の中国東北部南部から朝鮮半島の大部分を支配した大国で、正恩氏の優越感をくすぐるものだ」という。

 こうしたなか、存在感が低下しているのが文在寅(ムン・ジェイン)大統領率いる韓国だ。

 「北朝鮮は2月の米朝首脳会談後、トランプ政権の厳しい対応を見誤った韓国を『信頼できない』と突き放した。米国も最近、文政権は『北朝鮮より、中国に近い』と分析している。日本は韓国海軍駆逐艦のレーダー照射事件や、いわゆる『元徴用工』の異常判決などもあり、文政権と距離を置いている」(日米情報当局関係者)

 トランプ氏の来日を受けて、日朝首脳会談や拉致問題が大きく動いた場合、夏の参院選に合わせて行われる可能性がある「衆参ダブル選挙」にも影響しそうだ。

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