参院憲法審は開かれるのか 衆院側「苦労しても廃案に…」

【政界徒然草】

 衆院憲法審査会は9日、憲法改正の是非を問う国民投票でのCM規制のあり方をめぐり参考人質疑を行った。憲法審での実質的な議論は衆参両院を通じて1年3カ月ぶりで、与党は国民投票法改正案の成立に意欲をみせる。ただ、ここにきて衆院側から、改正案を次に議論する参院憲法審の「受け入れ態勢」を懸念する声が出始めた。参院側は与野党合意のもとで参院へ送付するよう求めており、このままでは事実上、今国会での成立は難しい。

 9日の衆院憲法審では、CM規制のあり方について日本民間放送連盟(民放連)幹部から意見聴取が行われ、民放連は国民投票法が求める「表現の自由」に抵触するとして、CM量の自主規制はできないとの考え方を表明した。

 国民投票法にはCM費用の上限規制がないため、野党側は政党や団体の資金力によりCM量に差が生じ、投票の公平性が損なわれると規制を求めている。

 一方、継続審議となっている国民投票法改正案は、デパートなどへの共通投票所の設置など、平成28年に改正された公職選挙法と同様に有権者の投票機会を確保し、利便性の向上を図る目的だ。今回の憲法審でテーマとなったCM量の規制は含まれていない。

 立憲民主党や国民民主党も改正案の内容には反対していないため、与党は9日の憲法審に先立つ幹事会で16日中に採決するよう提案したが、野党は回答を保留した。

 ようやく正常化した衆院憲法審に比べ、出遅れているのが参院憲法審だ。今国会に入って一度も開かれていないばかりか、憲法審の前段となる幹事懇談会も開催されていない。

 ある与党幹部は「衆院で苦労して参院に改正案を送っても、参院が開かれなければ廃案になるだけだ」と懸念を深める。

 さらに別の幹部は「夏の参院選を前に、憲法改正が争点化するのを避けたいと思っているのは、公明党だけではなく、自民党も同じだ」と語り、参院憲法審の遅れには政局的な側面があると分析する。

 一方、参院の与党幹部は、国民投票法改正案を成立させるには「衆院で煮崩れしないことが前提だ」と反論する。

 9日の衆院憲法審では、立憲民主党の枝野幸男代表が、平成19年の国民投票法成立時に民放連が「CM量を自主規制する」と述べていたことを引き合いに出し、国民投票法の前提が崩れたとして「現行は欠陥法だ」と批判。現行の国民投票法の制定に関わった枝野氏自身と、当時与党側の責任者だった自民党の船田元衆院議員を憲法審の参考人として呼ぶよう求めた。

 衆院側の与党には、国民投票法改正案の内容には主要野党も賛成しており、3国会にわたって審議されていることを理由に、与党のみで改正案を衆院通過させるべきだとの意見もある。

 しかし、与野党の合意がないまま参院送付となれば「それこそ参院憲法審が開けなくなる」(参院与党幹部)事態も予想される。昨年秋の臨時国会では、自民党の下村博文憲法改正推進本部長が、審議に応じない野党の態度を「職場放棄」と批判し、下村氏が衆院憲法審の幹事を辞退する事態に追い込まれた。

 憲法審の運営は与野党の合意が前提となっているが、主要野党はこれを盾(たて)にして、憲法改正の議論自体を遅らせてきた。与野党間に異論がないはずの国民投票法改正案でさえ、針の穴を通すような難しい交渉が必要となっていることは、国民投票の有権者である国民にどう映るだろうか。(政治部 大橋拓史)

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