紙幣刷新に漏れた二千円札 令和時代を生き残れるか

 【安倍政権考】

 一万円、五千円、千円の紙幣(日本銀行券)が肖像画やデザインを変え、20年ぶりに刷新される。新元号「令和(れいわ)」の時代に合わせた世代交代ともいえるが、今回、刷新対象から外れたのが二千円札だ。他の紙幣より使い勝手が悪いため流通枚数が極端に少なく、刷新による偽造防止の必要性が低いと判断された。政府は需要拡大を促してきたが、思うような成果は上がっていない。地元のシンボルの守礼門が描かれた沖縄県では日常的に使われているが、全国規模で生き残ることはできるのか。

 「二千円札は流通枚数が少なく、偽造防止の必要性が低いことから、デザイン変更は行わない」。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は4月9日の記者会見で、二千円札が刷新対象から漏れた理由をこう説明した。

 紙幣の刷新は、最新の偽造防止技術を反映させるのが主な目的だ。令和6(2024)年上期から発行される新たな一万円、五千円、千円の紙幣は、肖像の3D画像が回転するホログラムを世界で初めて紙幣に採用する。

 一方、二千円札は平成12年の九州・沖縄サミットに合わせ、当時の小渕恵三首相がミレニアム(千年紀)プロジェクトの目玉として発行を決断した。これまで8億8000万枚が製造されたが、今年3月末時点で市中に出回るのはわずか約1億枚で、残りは日本銀行の備蓄などに回っている。一万円札の流通枚数が約100億枚。五千円札、千円札も合わせると150億枚近くに上り、二千円札とは大きな開きがある。

 財務省理財局の可部哲生局長は4月10日の衆院財務金融委員会で「偽造防止を施して券面を刷新するには一定のコストがかかる。二千円券は流通残高が少ないことに加え、使用していない備蓄もある。新たなコストをかけるのは現時点では差し控えている」と説明した。

 二千円札はなぜ流通枚数が少ないのか。日銀は二千円札のメリットとして「現金の支払い、受け取りに要する紙幣を節約できる」と強調するが、自動販売機で使えなかったり、主要な銀行の現金自動預払機(ATM)で出金できず、普及が阻まれた。現状では「日銀に備蓄されている保管高で対応できており、新たな製造は行っていない」(可部氏)という。

 政府はこれまで二千円札の普及促進に努めてきた。日銀と一緒に二千円札をPRするリーフレットなどを作成し、金融機関やホテルで配布した。「日本のちいさな文化財」と日本語と英語で紹介し、日本人だけでなく訪日外国人にもアピールしている。金融機関には二千円札の積極的な払い出しの要請も行ってきた。それでも目立った成果はみられないのが実情だ。

 とはいえ、“ご当地”の沖縄では「流通は増加している」(財務省幹部)という。地元銀行が優先的に二千円札を払い出すATMを設置するなど、普及に力を入れている。この幹部は今後も「日本銀行券への需要動向を注視しながら、日銀とともに二千円券の流通促進に取り組みたい」と語る。

 ただ、インターネットのオークションサイトでは二千円の新札が2~3割増の価格で出品され、早くもプレミア化しつつある。今回の刷新の対象から漏れたことで、取り残された感も出てきた。令和に入り、このまま消えていくのか、それとも何らかのきっかけで息を吹き返すか。紙幣刷新の裏で、ひそかに注目を集めている。(政治部 中村智隆)

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