相次ぐ「失言辞任ドミノ」は自民党の“一強多弱”が原因か

 【政界徒然草】

 失言による安倍晋三内閣の閣僚らの辞任が相次いだ。5日には塚田一郎元国土交通副大臣が、10日には桜田義孝前五輪相が事実上更迭された。「失言辞任ドミノ」が止まらない現状に、識者からは自民党の一強多弱が招いたとの声が上がる。与党幹部は政治家が言葉を軽視する事態に警鐘を鳴らす。

 「おもてなしの心を持って復興を応援していただければありがたい。そして、復興以上に大事なのは高橋さんですので、よろしくお願いします!」

 東京都内のホテルで10日夜開かれた自民党の高橋比奈子衆院議員(比例東北)の政治資金パーティー。壇上に立った桜田氏は、高橋氏の地元の岩手県が東日本大震災の被災地であることに触れつつ、高揚した表情でこう述べた。

 発言の直後、会場にいた記者数人は桜田氏に発言の真意を尋ねたが、桜田氏は「記憶にありません。言ったことありません」と断言し、会場を後にした。

 しかし、発言は即座に官邸に伝わり、桜田氏をかばいきれないと判断。桜田氏は約2時間後には辞表を提出した。

 塚田氏のケースも発言の軽率さが目立った。塚田氏は1日、北九州市で開かれた集会で、山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の国による直轄調査への移行に関し「首相や麻生太郎副総理が言えないので私が忖度(そんたく)した」と語った。

 翌日には発言を撤回したが、野党から連日追及され、塚田氏は5日、「行政への信頼を損ね、国政の停滞を招いた」として、副大臣の職を辞した。

 振り返ると、これまでも政治家の舌禍による辞任劇は数多くあった。今村雅弘元復興相は平成29年、東日本大震災に関し「まだ東北で、あっちの方だったから良かった。首都圏に近かったりすると、莫大(ばくだい)な、甚大な額になった」と述べ、同日中に事実上更迭された。

 民主党政権下でも、23年には松本龍元復興相が岩手、宮城両県の知事に「知恵を出さないやつは助けない」「意見集約をやらなかったらこっちも何もしない」などと発言し、就任から9日目で引責辞任に追い込まれた。

 与党幹部は、今回の塚田、桜田両氏の失言について「(場を盛り上げようと)サービス精神だった」と推測する一方、「政治家としての言葉の重みを理解していなかったのだろう」と嘆く。

 立憲民主党などの主要野党は、桜田氏らの更迭を受け、衆参両院予算委員会での集中審議を求めている。与党側は応じない構えだが、更迭が政権に大きな打撃となったのは否めない。

 なぜ、政治家は失言を繰り返してしまうのか。日大法学部の岩井奉信教授(政治学)は、長期政権が続く自民党の一強多弱の政治状況で「緊張感がなくなっていることが前提にある」と指摘する。与野党の勢力が拮抗しているときと違い、安定的な政権運営が続く中では、閣僚らの注意力や警戒心が緩むというのだ。

 岩井氏はさらに、スマートフォン一つで誰でも録音や録画ができ、SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)を使って拡散できるという時代背景も原因の一つにあげる。

 岩井氏は「今は世間中に監視の目がある状況だ。昔なら言った、言わないという曖昧な場合もあったが、今は誰かが必ず記録し、言い逃れしにくい社会になっている」と言及する。そのうえで「政治家は言葉が命なのだから、時代を理解して発言しないといけない」と強調した。

 一連の更迭劇の後も、安倍内閣の支持率に大幅な下落は見られない。しかし、有権者から付託を受けた国会議員ならば、過去の失敗と現在の社会形態に目を向け、自身の言葉に足元をすくわれるような失態は繰り返してほしくない。(政治部 今仲信博)

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