体温39度でメモ途絶え…特殊清掃業者が見た自宅療養の現実

 5月中旬、産経新聞の取材に応じた男性の息子によると、男性は自宅で入院調整中だったという。

 感染が判明したのは4月29日。病床不足で入院先は見つからなかったが、自分で食事ができ、普通に会話もできる状態だった。かかりつけ医と相談し、改めて保健所に調整を掛け合うことにしていた。

 ところが、翌30日に事態が急変。部屋に様子を見に行った介護職員から電話があり、「お父さまが亡くなった」と告げられた。

 「高齢者だし、すぐに入院できると思っていた。後悔ばかりが残っている」。看病に向かおうとしたが、遠方にいることや感染のリスクを考えて断念した矢先だったという。

 亡くなった男性は薬剤師だった。コロナへの関心も高く、感染の現状やワクチンに関する記事などを集め、情報を集約していたとみられる。

 戦後の復興とともに人生を歩んだ男性は、今夏の東京五輪を心待ちにしていた。息子は「自分に何ができたのか、何が正解だったのか。今でも分からない」と複雑な胸中を明かした。

 《4月6日 午前5時 36度7分、午後4時半 37度5分…》

 近畿地方で孤独死した60代男性の自宅からは、体温と計測時間を詳細に記録したメモが見つかった。

 体調面への不安からか、1日に10回も測定を繰り返していた日も。最後の記入は「39度4分」。数日前までの几帳面な文字とは違う乱れた筆跡が、男性の身に生じた異変を想像させた。

 男性に持病はなかったというが、亀澤社長は「(状況から)コロナ感染の可能性が高いと考えている」と話す。

 警察庁によると、全国の警察が4月に扱った変死などによる遺体のうち、コロナに感染していたのは96人。うち91人が自宅や宿泊施設などで容体が悪化し、死亡していた。生前に感染が確認されていたのは39人で、死後に判明したのは57人だった。

 ただ亀澤社長の体感はデータとは乖(かい)離(り)がある。昨春からのコロナ下で、関西クリーンサービスには依頼や相談が急増。昨年5月ごろまでは1カ月に20~35件程度だったが、同12月は141件、今年3月は211件にも上った。このうち、コロナ感染とおぼしきケースも相当数ある。

 亀澤社長が実感を込めて語る。「公表されている数よりずっと多くの人が、検査すら受けられずにコロナで亡くなっているのではないか」。(花輪理徳)

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