体温39度でメモ途絶え…特殊清掃業者が見た自宅療養の現実

 日々の体温を詳細に記したメモ書きは、39度を超えたある日を最後に途絶えていた-。新型コロナウイルスの影響で都市部を中心に医療提供体制が逼迫(ひっぱく)するなか、感染しても治療を受けられないまま、誰にも看取られずに自宅で死亡する患者が相次いでいる。親族からの依頼を受け、そうした部屋で遺品整理や清掃、消毒・消臭を担うのが特殊清掃業者だ。彼らが目の当たりにしたのは、住人が死の間際まで孤独と闘ったことをうかがわせる生々しい痕跡だった。

 「コロナで亡くなった家族の部屋を片付けてほしい」

 大型連休が明けた5月上旬、特殊清掃事業を請け負う関西クリーンサービス(大阪市東成区)にこんな依頼が寄せられた。

 スタッフが向かったのは神戸市内の一軒家。コロナに感染した独居の住人男性(90)が4月末、治療を受けることなく亡くなったという。

 防護服と特殊なマスクを身に着けた数人のスタッフが家に上がる。テーブルに並んでいたのは消毒液やペットボトル。皿の上に置かれたままのパンが、あまりに突然訪れた死を物語っていた。

 部屋には、神戸市から届いたワクチン接種券のほか、コロナに関する新聞記事の切り抜きが入った封筒、ワクチンの効果などを記したとみられる大量のメモ書きも残されていた。

 「マメな性格の人だったのかな」。関西クリーンサービスの運営会社の亀澤範行社長(40)はそうおもんぱかり、「本来なら孤独死とは無縁の人だったはず。医療が逼迫していなければ、助かっていた命なのかもしれない」と唇をかんだ。

 亀澤社長らは2日間かけ、部屋の消毒や所持品の整理・処分を終えた。

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