「男と女」「東京と地方」「スポーツカーと軽トラ」認識のギャップが面白くて 免許を持たない著者が「クルマ」を“料理”してみたら…篠田節子さん『田舎のポルシェ』

 同じテーマや素材では二度と書きたくない、というほど多彩なジャンルの作品群で読者の心をワシづかみにしてきた篠田節子さん。今度は「クルマ(自動車)」でつながる連作だ。免許さえ持っていないほど“車知らず”の作者が、車を“料理”してみたら、ちょっと切なくも、温かいフルコースが紡ぎ上がった。 (文・南勇樹、写真・高橋朋彦)

 --最初に書いたのが、スウェーデン車のボルボをめぐる物語

 「車に特別な愛情や愛着、こだわりを持っている男は多いのに、女(妻など)にとっては『生活のツール』に過ぎない。そのギャップが面白いと思ったのがきっかけ。そこから、車でつながる、まったく違う物語を書いてみたいと考えたんです。ボルボを(題材に)選んだのは車に詳しい人からのアドバイス。(物語の設定は)実直なサラリーマンが愛人か恋人みたいにいつくしんだ車。ジープでもないし、イタリア車やフランス車もちょっとイメージが合わないかなって」

 --「いつかはクラウン」みたいに功成り名を上げた暁には…の車ですね

 「私たちの時代には、そういう男性がたくさんいましたね。財力や環境さえ許せば『高級車に乗ってみたい』って。ウチ(の夫)はそうじゃない。私ときたら自動車の免許さえ持っていませんし、関心はゼロ。感覚としては『生活の…』に近い。車のことはまるで知らないから詳しい方から取材したり、実際に乗せてもらったり」

 --その大事なボルボが定年後に妻から「次は軽(自動車)でいい」と突き放されてしまう

 「そこが男女の違いなんでしょうね。定年になったけど、まだ年金はもらえない、生活レベルは落とさなくちゃいけない。移動の手段だけだったら『軽』で十分でしょう、と妻は思う。でも、夫は現実をなかなか受け入れられない。実際、定年になったのだから『これからは料理作ってください』と言い渡される夫も多いらしいですよ」

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