フェーン現象で大火頻発の街 避難グッズは「系図」だった

 主人は系図や証文を持ち出し、妻は過去帳(亡くなった人の名前などが書かれた帳簿)と仏壇を片付ける-。鳥取藩のある豪商が所有していた文書の一文だ。書かれているのは火事の際の避難手順。災害が起きたときにどう行動するかをあらかじめ決めておく、いまの「マイ・タイムライン」にも通じるものがある。同藩では武家にも「非常持ち出しかばん」があったという。現代を先取りするような対策の数々。関連した品々が鳥取市歴史博物館で展示されており、同館は「こうした火災対応はほかの藩ではみられない。フェーン現象などでたびたび大火災に見舞われた鳥取城下ならではの備え」としている。

「長男は主人の手伝い」

 火事の避難手順が書かれているのは鳥取城下で質屋などを営み城下の「町年寄役筆頭」を務めた豪商、石井家の「出火之節定(しゅっかのせつさだめ)」。江戸時代後期の天保年間ごろの起草とみられ「正月七日」の日付がある。

 「主人は系図と家計簿・取引簿やもろもろの証文、質札などの管理をするとともに、あらゆることの差配を。おなみ(妻の名)は過去帳と仏壇を片付けて、奥の8畳の間に大切なものを集めて番をし、いよいよとなったら幼児を連れて避難する」

 「定」では主人と妻のほか長男、次男や奉公人らについて9項目の指示を記している。たとえば、長男、次男は「主人の手伝い」をし、その下の子供や奉公人は、「帳面を片付けて、雨戸を開け、建具や諸道具を蔵に運ぶ」「大戸口の鍵を保管し、火だねを始末し、他の奉公人に片付けの指図をする」などと細かく動きを指示。役割分担して財産を守るため、指示を「厳重に守るよう申し付ける」としている。

リュックのような持ち出し「系図箱」

 豪商の非常用携帯物入れもある。「系図箱」で、文字通り系図を入れたほか、「定」で主人が管理するとされた証文や質札などを詰めたとみられる。高さ約60センチ、幅約40センチ、奥行き約30センチで、板の箱に鹿皮を巻いて火の粉や水から中身を守るよう頑丈に作られている。背負って持ち運べるように肩ひもをつけているなどは、まるでリュックサックだ。

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