つらい気持ち精神腫瘍医に 心や感情にふたしないで

【がん電話相談から】

 「がん電話相談」では、患者やその家族から、治療や将来への不安などさまざまな悩みが寄せられている。特に、新型コロナウイルスが感染拡大するなか、つらい気持ちが増大している人も少なくない。がんと向き合うときに心強い味方となるのが精神腫瘍医だ。4千人以上のがん患者や家族の相談に乗ってきた、がん研有明病院腫瘍精神科の清水研部長に心のケアについて聞いた。

 Q 腫瘍精神科はどんな診療科ですか

 A がんという病気を熟知している精神科医や心療内科医が診察にあたっています。精神腫瘍科と標榜(ひょうぼう)しているところもあります。患者さんのなかには一般のクリニックを受診したとき、「がんのことはよく分からない」と言われてしまった人もいるようです。

 がんになると「死んでしまうかも」と感じ、自分の人生が脅かされます。10年後20年後も続いていく前提でいた想定が崩れてしまう。患者さんは5人に1人が鬱状態になるといわれています。患者さん本人だけでなく、そのご家族など、がんにまつわる心の悩みに幅広く対応しています。

 Q がんの経過とともに気持ちはどう変化しますか

 A 検診からがん告知までは不安にさいなまれ、告知後は「健康が失われてしまった」と落ち込みます。治療が始まると目標ができるので前向きな気持ちになりますが、治療が終わると再発の不安が強くなる。特に精神的危機を迎えやすいのが、「がんの告知を受けたとき」「再発したとき」「積極的な治療の適応がなくなるとき」-ですね。

 一方で、がん体験を通じてさまざまなことに気づく方もいます。生きる意味の喪失やこれまでの価値観の崩壊などつらい感情がめぐった後、病気になったことの意味を考え、人生に対する感謝や人間としての強さを身につける人もいます。

 Q 受診の目安は

 A 鬱症状がひどい方にはおすすめします。鬱には特徴的な2つの症状があります。一つは、1日の半分以上気持ちが晴れない状態が続いていること。もう一つは、テレビを見るのが好きな人がテレビを見る気が起きないなど、いろいろなことに対する興味がわかない状態です。どちらか一つでも症状が週単位で続く場合は危険なサインです。

 Q どんな治療を受けられますか

 A 当院では初診は1時間半ほどかけ、心理職と医師が話を聞きます。2回目以降は15分ほどです。治療に対する希望を伺い、その方の精神状態に合わせたカウンセリングによる支援や薬物療法を行います。

 Q がんになったとき、自分の心を守るにはどうしたらいいですか

 A 心や感情にふたをしないことです。人生の計画変更を余儀なくされたと感じるなかで、落ち込むのは当たり前。負の感情にも大切な役割があります。腹立たしいという怒りの感情を押し込めようとしないでください。また、悲しい時はしっかりと悲しむことで心が癒やされます。もし気持ちがなかなか上向かないなら、それだけあなたにとって大きな出来事だったということですので、焦らなくていいですよ。

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 近年、精神医療の分野で注目されているのが「レジリエンス」だ。患者の強みに焦点を当て、ストレスを乗り越え、生きる力を引き出す手法だ。がん研有明病院の腫瘍精神科はレジリエンス外来を開設している。

 診察では、50分のカウンセリングを4~8回重ねる。がん罹患(りかん)前の価値観など人生を振り返った上で、がん告知で気持ちがどう変化したか、自分が何につまずいているのかに気づいてもらい、新しい価値観を築く手助けをする。清水医師は「がんになると大きなショックを受けますが、人間には自分で回復する力があります。患者の語りを誰かが聞くことで、回復へのプロセスが進みやすいという研究成果もあります」と説明する。

 医師との対話を通じて自分の問題を積極的に考える必要があるので、重い鬱症状などがある場合はレジリエンス外来対象外となる。

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 がんの悩みや疑問に答える「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日除く)の午前11時~午後3時に受け付けます。今週は4、5日は休止で、6日のみです。電話は03・5531・0110、無料。相談は在宅勤務でカウンセラーが受け付けます。寄せられた相談内容を専門医が検討し、紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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