小川洋子さんが語った文学の深み「理屈ではさばけない闇」

 その考察として、「結局、人間とか社会とかには、理屈ではさばききれない闇みたいなものがあって、それをありのままに差し出そうとしたら、こういう小説になるのかな。それこそが文学の深みなのかなと思います」と語った。

 すると、「文学は何のためにあるのか」という究極の問いに行きつくが、「結局、それをだれも説明できないし、人間は物語を作り続けて生きながらえてきた」と指摘。「言葉で説明できないことのために言葉で挑みかかっている、というのが小説を書いているものの、しんどさであり、ときにやりがいであると感じます」と強調した。

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 講演会は、作家で大阪文学協会の代表理事、葉山郁生さんの司会によって進み、『完璧な病室』『密(ひそ)やかな結晶』『博士の愛した数式』『小箱』など小川さんの作品を掘り下げた。

 純文学では異例のミリオンセラーを誇る小川さんの作品世界は、「記憶」や「喪失」、日常と虚構の「境界」などを題材に非常に重厚で、人間に潜む残酷さや悪意までをも凝視する。

 第二次世界大戦時、潜伏生活を送ったユダヤ系ドイツ人少女の日記『アンネの日記』が、作家を志すきっかけになったという小川さん。記憶狩りによって消滅が進む島を描いた『密やかな結晶』は、アンネ・フランクへのオマージュだ。

 「人間が、理由もなく少しずつ自由を奪われていく過程を書きたいと思い、本来なら誰にも奪われない『記憶』という最も根本的なものが奪われる形にしたのです」と明かした。

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