膵臓がん、3年生存率7割超の「コンバージョン手術」 「切除不能」患者根治への“切符”

暗黒大陸を照らす光 膵臓がん治療最前線

 がんが膵臓周辺の重要血管へ浸潤している場合(ステージIIIの一部)や、他臓器へ転移している場合(ステージIV)は切除不能と診断される。それらの患者の標準治療であるゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法とフォルフィリノックスと呼ばれる3剤併用療法は、膵臓がん治療においてエポックメイキング的な化学療法だ。それでも根治ではなく、がんを抑え込むための治療でしかない。

 ところが、これらの化学療法の恩恵によって、切除不能と診断された膵臓がんを手術に持ち込めるケースが出てきた。抗がん剤でがんを縮小させてから手術を行うコンバージョン手術がそれだ。日本でトップクラスの膵臓がん手術数を誇るがん研有明病院(東京都江東区)ではこの手術の適応を積極的に検討し、2014~19年の5年間で500人弱の切除不能と診断された患者のうち38人に同手術を実施。その後も症例数を重ねている。

 「外科医にとって膵臓がん治療は、以前は手術ができるかできないかの2択だけでした。しかし、2通りの化学療法が登場したことにより患者さんを『切除可能』『切除可能境界』『切除不能』の3つに分類し、前2者は化学療法と手術を組み合わせた治療を行うようになりました。『切除不能』は基本的に化学(+放射線)療法ですが、その効果によっては手術ができるくらいになる方が見られるようになってきました。38人は切除不能患者全体の1割にも満たないですが、以前は切除対象に戻ってくる患者はほぼゼロでしたから、大きな前進です」

 同病院肝胆膵外科部長の高橋祐医師は話す。

 とはいえ、同手術の選定基準は厳しく、(1)他臓器への転移が3個以内で抗がん剤によりほぼ消失(2)腫瘍マーカーが正常値(3)8カ月以上は化学療法を実施--の3つをクリアしなければならない。言い換えれば、切除不能の中でも状態がよく、化学療法の効果が長期間、持続している患者が対象だ。

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