「またクラスター起きるのでは…」介護施設、拭えぬ恐怖 

 ■恐怖は今も

 クラスターが起きたとして施設名が報道されると、心ない批判や抗議の声も届いた。全員の心身が疲弊する中、無言電話を受けたこともある。「全員が陽性になるまで、収束しないのではないか」。事務長の頭には当時、そんな思いがよぎったという。

 事態が落ち着いたのは同9月末。最終的な感染者は入所者と職員を合わせ、計36人に上った。重症化するまで入院できなかった入所者もいた。

 このうち10人は感染発覚から回復まで施設で過ごすことを余儀なくされた。

 クラスターの経験を踏まえ、事務長は訴える。「入所者は食事や排せつに介助が必要で、ホテルなどに隔離はできない。早期に入院できる態勢が必要だ」。感染の「第3波」が広がる中、「またクラスターが起きるのではないか」という恐怖は、今も拭えていないという。

 ■医療崩壊につながる

 クラスターが発生した施設で支援を続ける国際協力NGO「ピースウィンズ・ジャパン」の坂田大三医師は、高齢者施設や介護施設でのクラスター対応をこう例える。「闘い方も分からず、武器もないままで戦場になった状態だ」

 施設の入所者は食事や排せつが一人でできず、職員らのサポートを必要とするケースが多い。そのため、一般社会で求められるソーシャルディスタンスの徹底は、そもそも困難な状況といえる。一人でも感染者が出れば、感染が一気に広がるリスクがある。

 医療体制が行き詰まる中、医師や感染症の専門家から助言を受けられず、対応を迫られるケースもある。消毒用のアルコールやマスクなどが、十分に手に入らない状況にも留意が必要だ。

 同団体の調査では、施設の多くが物資面での支援を求めていた。手袋など一部の資材は品薄から価格が高騰し、小規模施設では入手が困難な状況もある。坂田医師は「入所者は重症化のリスクが高いことが多い。適切に対応しなければ、重症者が一気に増え、医療崩壊につながる」と警鐘を鳴らす。

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