児童虐待~連鎖の軛 子育て追いつめる「偏見」 監視でなく寄り添いを

 「子育ては大変ですよ」。中国地方の山下美里さん(28)=仮名=は出産を控えた一昨年の秋頃、周囲からこんな言葉ばかりかけられ、不安だけが膨らんだ。

 夫婦ともに子供と接する仕事に就き、子供は大好きだ。しかし、鬱病を抱える山下さんは妊娠中、薬の服用を中断したため、余計に気持ちが安定しなかった。子供の頃、父は母に暴力を振るい、母も子育てに無関心で、幸せな家庭を知らないという引け目もあった。

 山下さんが暮らす自治体では保健師が妊娠届を出した妊婦と面談する。育児に自信を持てない山下さんには担当保健師がつき、数カ月ごとに状況を聞かれた。

 「日中1人では赤ちゃんをみられない」「泣いたらたたいてしまうかも」。同年11月、出産が約1カ月後に迫り、保健師に訴えた。本当にたたくと思ったわけではない。それほど真剣に悩んでいると分かってほしかった。

 ただ、夫婦で子育てを考え、夫が育児休暇を取り、産後は夫の実家で暮らすことを決めると、不安は和らいだ。保健師や病院がつくった支援会議にこうした状況を伝えたが、虐待対応のイメージがある児童相談所(児相)と関わることには抵抗があり、支援会議に入りたいという児相の申し出は断った。

 12月末に長男を出産。不妊治療の末に授かった待望の子供だった。しかし、わずか4日後、長男は新生児室から児相に一時保護された。「たたく」という発言と育児不安の情報だけが強調され、児相に共有されていたという。

 「赤ちゃんが心配なので保護しました」。病室で児相職員に告げられ、涙が止まらなかった。「突然すぎる。家族と話し合い、一緒に子育てを考えてはくれないのか」

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