芥川賞の宇佐見りんさん 理想と現実のギャップ、執筆の原動力に

 デビュー作で最年少の三島由紀夫賞受賞者となったのが昨秋のこと。2作目にして今度は史上3番目の若さで芥川賞を射止めた。20日の会見で「すごくありがたいと受け止めつつ、若さに振り回されないでひたすら自分の目指すものを書いていきたい」と語った。

 受賞作「推し、燃ゆ」はネット上で炎上した男性アイドルを、自分のすべてをかけて「推す」ファンの女子高校生が主人公。大好きな人の一挙手一投足を追う高揚感、SNS上に渦巻く非難の嵐、学校やバイト先での挫折…。誰かを応援する幸福と周囲から理解されない孤独の悲しみがポップな文章で浮かび上がる。

 自らの心情が出発点になった。中学時代、ある人気俳優にひかれ、小遣いのほとんどをその俳優の公演に注ぎ込んだ。遠い他者を追う日々…。その営みに家族や友人関係と同様の大きな物語の芽があると感じた。

 「すごく感情を狂わされたり、ときには人生を肯定されて生きやすくなったり…と『推し』との関係性は趣味にとどまらない、一つの生き方。自分の中の理想とどうにもならない現実とのギャップが小説を書く原動力になっている」

 中上健次を愛読し、国文学を学ぶ大学2年生。幼いころから書くことが好きで、携帯電話に小説を打ち込んでは友達と見せ合った。小学校のときに書いた物語の記憶は鮮明だ。勉強して短くなってしまった鉛筆を土に埋めるお話。やがて鉛筆は成長して“鉛筆の木”になる-という夢のあるオチが付く。

 「読んだ人の深いところに響く。そんな骨太な作品を書いていきたい」。芥川賞作家という新しい肩書が大器の成長を後押しする。(海老沢類)

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