コロナ禍…「言葉の力」ラジオで発信 フリーアナウンサー・宇和千夏さん

 先の見えない新型コロナウイルス禍にあって、ラジオを通じて心に安らぎと元気を届け続けるフリーアナウンサーがいる。和歌山市在住の宇和千夏(ちか)さん(58)。春以降、外出自粛のため自宅で過ごす時間が多くなると、ラジオに耳を傾ける人も増えたという。コロナの影響で仕事を失うなど、社会に広がる不安をリスナーの声を通じて感じている。「いろんな悩みも楽しいことも共に感じ合い、いつもそばにあるのがラジオ」。スタジオでは、そんな思いを込めながら、マイクを前に言葉を紡ぐ。(小畑三秋)

 ■いつもの声で…

 エフエム和歌山(バナナFM87・7、和歌山市)で、パーソナリティーとしてほぼ毎日、数時間の番組を担当し、身近な話題やイベント、グルメ情報などを発信。ラジオ以外にも、結婚式やイベントの司会に呼ばれることも多い。

 しかし、新型コロナ感染が東京や大阪、和歌山などで広がり始めた2月以降、状況が一変した。イベントや結婚式が次々と取りやめになり、司会の仕事もキャンセルに。4月の緊急事態宣言からは、外出自粛要請や飲食店・レジャー施設などの臨時休業で、番組もグルメや映画紹介などが難しくなった。

 自身も、和歌山市内のスタジオからの放送だったのを、外出や人との接触を避けるため自宅に機材を持ち込んで、いつもの声をかわらず届けた。

 「今は自宅から放送しています。私もコロナのために、イベント司会のキャンセルが続いて大変なんですよ」。暗くなりがちな話題も、持ち前の明るさで軽妙に語りかけた。

 リスナーからはこの間、「こういう非常時でも生(放送)でやってくれているのがうれしい」「家から出られない日が続いて苦しいけど、宇和さんの声で元気が出ました」などのメールが急増し、2時間番組の間に40~50本に上ることもあった。

 「いつもの時間にいつもの声が、ラジオから流れる。何げないことがとても大切なんだ」。コロナによって、ラジオの意味を改めてかみしめた。

 ■「命の番人」として

 同局で月~金曜、10年以上続いている長寿番組がある。「こころの病を知ろう」。日赤和歌山医療センターの東睦広(ひがしむつひろ)精神科部長との対談形式で、自殺を考えたり失意の中にあったりする人たちに少しでも寄り添おうという内容だ。

 「うつになるのは、まじめで責任感の強い人が多い。もっと楽に、頑張らなくていいんだよと思ってくれれば」とのメッセージを込める。

 宇和さん自身、この番組がスタートするのを機に、自殺防止へ政府などが取り組みを進める「ゲートキーパー」(命の番人)となり、心の悩みをもつ人にじっくり耳を傾けている。

 ■出会いの橋渡し

 ゲートキーパーの経験と、ラジオが結びついた事例がある。

 「こころの病-」とは別の、宇和さんが担当する番組を1年以上聞いていた男性がいた。「明るくしゃべり続けるこのおばさんは、どんな人だろう」と公開放送に訪れた。自宅に引きこもっていたというこの男性は「家から出られない。何度も死のうと思った」とぽつりぽつり話しだした。しだいに心の扉を開き、外出ができるようになり仕事にも就いたという。

 「ラジオから流れる声を通じてリスナーたちがいろんな思いを抱き、互いにつながっていく。私はその橋渡し役でありたい。いい出会いがあると、人は前を向くようになるんです」。コロナ禍にある今だからこそ、ラジオから発する言葉の力を信じている。

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