郊外でいまだに乱立…ショッピングモールの未来を疑え

マンション業界の秘密

 コロナ禍において、旧来の流通業界の明暗が分かれている。デパートは続々閉店。それに比べて大型スーパーの業績はそこそこ。都市近郊の食品スーパーは業績好調だが、都心店舗は不振。

 巣ごもり系と言われる需要は旺盛である。テレワークの機材関係でPCとその周辺、ネット配信やゲームも好調だとか。

 コロナは人々の家にいる時間を長くした。その結果、住宅業界でも多少の異変が起きている。

 キーワードは「部屋数と広さ」。それを求めて新築なら都心のミニ戸建、郊外なら格安の中古戸建ての需要が旺盛だ。

 湘南(神奈川)や九十九里(千葉)などの海辺では、中古戸建ての流通や賃貸も盛況だという。しかし、こういったトレンドは一時的なように思える。

 大きな流れがさらに速まったのは人々の消費だろう。お店まで足を運ばなくてもたいていのモノが買えることを、この巣ごもりによって実感した人も多い。最近の不動産業界のジョークだが、「そのうちアマゾンでマンションを売り始めるよ」というのがある。すでに何年も前からヤフオク!(ヤフーオークション)では不動産を扱っている。

 もっとも、マンション業界はまだ感覚が遅れている。郊外では大型スーパーをキーテナントとする多彩な商業施設を伴った複合開発が、今でも盛んに行われている。「ららぽーとスタイル」とでも言うべきか。

 つい数カ月前にも東京都江東区の五輪エリアで大型の複合施設が開業した。千葉県の海浜幕張エリアでも同様の開発が進んでいる。ああいった開発は平成時代の遺物であり、令和の今は完全に時代遅れだと思う。

 確かに、開業直後は物珍しさで人が集まってくる。しかし、江東区の五輪エリアも海浜幕張も、今の今まで手を付けてこなかったのは立地の魅力が薄かったから。つまり、人を集めにくい交通の不便さが際立つエリアなのである。

 東京というメガロポリスが膨張している間は、ああいった開発も悪くない。そのうちまわりが追い付いてきて、ショッピングモールはますますにぎわうようになる。しかし、すでに東京という街は縮小期に入っている。大きな複合施設を作っても、人が集まるのは最初の数年とも思われる。

 その商業施設を付加価値にして、同じ街区内で高値で販売されるマンションの資産価値はどうなるのか。仮に、キーテナントが撤退すれば悲惨なことになりかねない。

 都心近辺ならまだしも、郊外や準郊外の交通利便性のよろしくないところで、これ以上、無理目の複合開発を行うべきではない。その華やかさに幻惑されてエリア内のマンションを高値で購入した人の未来から、幸せの養分を奪い取る結果になる可能性を秘めている。

 すでに平成型の開発は時代遅れ。消費者側も冷静な選択眼を持つべきだろう。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 

 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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