万病のもと「肥満」と「肥満症」の違いとは?

食と健康 ホントの話

 肥満は万病の元。しかし、かなり太っていても健康診断でほぼ問題のない人もいれば、少し太っただけでいろいろな数値が悪化してしまう人も。これはどう考えればよいのか。名古屋市立大学肥満症治療センターの田中智洋副センター長に、第52回日本動脈硬化学会での講演内容を元に話を伺った。

 まず肥満の定義から。肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に沈着した状態で、BMI(体格指数[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗])が25以上(日本)のものだ。

 脂肪組織とは、脂肪細胞がブドウの房状に集まってできている組織で、体内最大の臓器とも言われている。脂肪細胞は、一般的な細胞と比べると大きく、しかも細胞質(細胞の内側)の大半は油滴(細胞内にある脂質の貯蔵場所)が占める構造をしている。

 脂肪細胞は、この油滴に脂質を貯め、必要なときには取り出す「倉庫」の役割をしている。また、この20年の研究の進歩により、脂肪細胞は多種多様なホルモンや生理活性物質を分泌することで、全身の代謝をコントロールしていることがわかってきた。

 次は「肥満症」について。簡単にいうと、肥満は医療の対象外で、肥満症は医療の対象になる状態だ。具体的には、BMI25以上で、肥満に起因・関連する11の健康障害(糖尿病、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝、月経異常、睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、整形外科疾患、肥満関連腎臓病)が1つ以上ある場合に診断される。

 とりわけ、腹部CT検査で測定した内臓脂肪面積が100平方センチメートル以上の内臓脂肪型肥満である場合は、健康障害を発症しやすく要注意だ。BMI35以上の高度肥満である場合には高度肥満症と診断する。

 これらの健康障害の有無はメタボリックシンドロームの診断基準とも重なる。腹囲が大きくかつ血糖・血圧・血清脂質のうち2つ以上が基準値から外れている状態=メタボではないけれども、肥満症に当てはまるという人も少なくないはずだ。

 冒頭でも言及したが、BMI25以上でも健康障害を1つも持たない「代謝的に健康な肥満」の人もいれば、逆にBMI25未満でも、これらの健康障害を多数合併している人もいる。後者はMONW(代謝的に肥満した正常体重)といい、お腹がぽっこり膨れ、内臓脂肪がたくさん蓄積した人に多い。「肥満症の基準としてはBMIを25と決めていますが、肥満症とともに、MONWについてもしっかり考える必要があります」

 さらには近年、異所性脂肪も問題になっている。内臓脂肪の量にかかわらず、本来の倉庫(脂肪細胞)ではない肝臓や膵臓や心臓などの臓器や筋肉などの細胞の中に油滴がたまる病態だ。

 「異所性脂肪が、高度のインスリン抵抗性を伴う糖尿病や脂質異常症、そして早期からの重症の動脈硬化症の早期からの進展につながると考えられています。このことは、脂肪組織の量ではなく、倉庫としてきちんと機能する(健康な)脂肪組織の存在が、異所性脂肪の沈着を予防し、我々を守るために重要であることを示唆しています」

 次週は肥満症の治療法について。(医療ジャーナリスト 石井悦子)

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