「心の表現」の軌跡示す 加藤楸邨、未発表500句含む新編全句集

 <隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤(どとう)かな><鰯雲(いわしぐも)人に告ぐべきことならず>-。生活に即した人間の感情をうたった昭和を代表する俳人の加藤楸邨(しゅうそん)(1905~93年)。その未発表の約500句を含む1万3532句を収める『新編 加藤楸邨全句集』(上下巻、青土社)が刊行された。推敲(すいこう)の軌跡が伝わってくる詳しい注も付され、「人間探求派」といわれた俳人の豊かな内面世界が一望できる。

 東京生まれの楸邨は俳誌「馬酔木(あしび)」で水原秋桜子(しゅうおうし)に師事。昭和15年に俳誌「寒雷」を創刊、主宰する。耽美的な自然詠から次第に生活に密着した人間の苦悩を見つめる句風へと転じ、中村草田男や石田波郷(はきょう)らとともに「人間探求派」「難解派」と呼ばれた。金子兜太さんや森澄雄さんらの後進を育てる一方、芭蕉の研究にも注力した。34年から45年まで「さんけい俳壇」の選者も務めている。

 今回の新編全句集は、10年前に出た旧版全句集には未収録だった約3800句を収めた決定版だ。このうち約500句は遺族から日本近代文学館に寄贈された未発表のもので、もとは紙に墨書でしたためられていた。「筆記具でひっかくように句を刻みつけるのではない。毛筆でなでるように発句を楽しんだ感じがよく伝わってきた」と編集委員の一人、俳人の長谷川櫂(かい)さんは話す。

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