盤上に棋士は生き続ける 奥泉光さん 将棋ミステリー「死神の棋譜」

 「プロ棋士の対局を見るのは昔から好きで、いろんな蓄積ができていた。一度はね、将棋ミステリーというものを書いてみたかったんですよ」。奥泉光さん(64)の新作『死神の棋譜』(新潮社)は奇妙な詰め将棋の図式を核に、謎がまた謎を呼んでいくスリルに満ちた長編ミステリー。虚実を取り混ぜ、棋士たちの人生をのみこむ盤上のドラマの魔力も描き出す。(海老沢類)

不詰めの図式

 第69期名人戦が行われた2011年5月のとある日に、東京・千駄ケ谷の鳩森神社の将棋堂に刺さっていた矢文(やぶみ)。そこに記されていた詰め将棋は、どうやっても玉が詰まない「不詰めの図式」だった。プロ棋士養成機関の奨励会三段だった夏尾は矢文を拾った翌日、消息を絶つ。

 20年以上前にもやはり矢文の棋譜を見つけた若手が姿を消したと聞いた将棋ライターの「私」は、かつて存在したとされる「棋道会」なる怪しげな団体を知る。矢文は誰が? 将来ある若手棋士はなぜ失踪したのか? 謎に引っ張られ、棋道会ゆかりの北海道の廃坑などを訪ねる「私」の危うい探索行が、ユーモアを交えた軽快な筆致でつづられていく。

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