心不全の再生医療拡大へ iPS使った慶大の新手法了承

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った心不全の再生医療は、慶応大の臨床研究が厚生労働省の作業部会で了承されたことで新たな段階に入る。慶応大の新手法は、1月に移植を実施した大阪大とは治療の対象や考え方が根本的に異なっており、多様な方式の登場で治療法の拡大につながりそうだ。

 慶大の臨床研究は、心臓の筋肉組織が薄くなって弱った特発性拡張型心筋症を対象とする。iPS細胞から作った心筋細胞を球状に加工し、患者の心臓に移植。組織と一体化して成長させ、拍動などの機能を持続的に回復することを目指している。

 心臓の直接的な機能回復を目指す慶応大に対し、大阪大は間接的な手法で改善を狙う。iPS細胞から作製した心筋細胞をシート状に加工し、血管の閉塞(へいそく)で心筋が壊死(えし)した虚血性心不全の患者の心臓に貼り付けた。

 シートは約3カ月で分解し消滅するが、血管形成を促進する物質を分泌し、心筋への血流を回復。またシートは心臓と同様に拍動し、心臓が全身に血液を送る機能を補助する。

 心不全の根本的な治療法は心臓移植だが、提供臓器は不足が続いている。また生活習慣の変化や高齢化の進展で、患者数は急激に増加。国内では100万人を超えて国の医療費を大きく圧迫しており、iPS細胞による再生医療への期待が高まっている。

 心臓移植より現実的で、患者の肉体的負担が軽いiPS細胞による治療の幅が広がれば、症状に応じた最適な治療の実現につながる。心臓病は日本人の死因の第2位であるだけに、その意義は大きい。(伊藤壽一郎)

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