【100年の森 明治神宮物語】学徒 雨中の壮行会「入隊、死も覚悟していた」

 鎮魂の季節が巡ってきた。

 明治神宮の施設では、外苑競技場で昭和18年10月21日、「出陣学徒壮行会」が開かれている。文系の学生に対する徴兵猶予が解除され、文部省などが壮行会を主催した。銃をささげ持った学生が雨の中を行進する映像を、陸軍分列行進曲の演奏とともに記憶する人は多いだろう。

 「雨のことより僕の思い出は、とにかく寒かったんだよ。早く終わらないかと思っていたね」

 阿山剛男さん(97)=横浜市=は当時、早稲田大商学部の学生で、学生服にゲートルを巻き参加した。気象庁の記録によると、この日の東京の最高気温は18・1度。雨が体感温度を下げたのかもしれない。

 東条英機首相は訓示で「もとより敵米英においても、諸君と同じく、幾多の若き学徒が戦場に立っている」と述べ、気魂(きこん)と戦闘力で圧倒せよと奮起を促した。行進する学生たちは競技場を出て、宮城(皇居)へと向かった。終点は二重橋だ。そこで「天皇陛下万歳」を叫び、壮行会は解散となった。

 銃を大学関係者に預け、阿山さんは4、5人の仲間と銀座に行き、喫茶店に入った。「何を話したか覚えていないが、悲壮な気分になった覚えは全然ない。小学校の頃から戦争の社会で育ち、兵隊に行くのは当たり前だったからね」

 学生が入隊したのは同年12月。この年から、戦局は急速に悪化する。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ