最年少タイトル戴冠! 藤井聡太七段は周囲も輝かせる素質の持ち主

勝負師たちの系譜

 現在17歳の藤井聡太七段が、ヒューリック杯棋聖戦と王位戦を戦っていて、まず棋聖戦でのタイトル奪取を16日に決めた。

 どちらを奪取しても、最年少タイトル獲得の記録を更新するとあって、両方の対局日は必ず、テレビのニュースで取り上げられている。

 将棋が事件でないことでワイドショーに出るのは、本当に珍しいことだ。羽生善治九段が七冠を制覇した時、スポーツ紙の1面に掲載されたのも驚いたが、藤井の場合はそれ以上だ。

 藤井は本人がスターとなって輝くだけでなく、関係した周りの人をも輝かせる素質を持っている。

 デビュー早々、29連勝の新記録を作った時は、それまでの記録保持者の神谷広志八段を有名にした。また今回は、今までの最年少獲得者の屋敷伸之九段がクローズアップされ、あちこちのメディアで引っ張りだこだ。

 棋聖戦の相手は、現役最強と言われる渡辺明棋聖(三冠)で、藤井は五番勝負をいきなり2連勝した。特に第2局では、渡辺が頭を抱えるシーンが何度も出てきたのが印象的だった。

 私には渡辺が「そんな手で悪くなるのかよ」という、藤井に人間離れしたものを感じ、感情のないAIと指しているような気がしたのではないか、と思わせるものだった。

 しかし、東京・平河町の「都市センターホテル」で行われた第3局では、追い込まれて居直ったか、渡辺棋聖は逆に藤井の得意とする角交換腰掛銀からの猛烈な攻めを淡々と受け、藤井ペースなのではと言われた局面から狭いところに飛車で王手して、反撃を開始した。

 さすがの藤井にして、意外な一手だったのだろう。その時の藤井が見せた苦悩の表情は、当然機械ではなく、人間だったことを感じさせた。

 それを一番感じたのは、当の渡辺だったかもしれない。やっと人間の藤井を捕まえた、と言った気がしたのではないだろうか。ほとんどのプロが藤井優勢と判断した局面を悪いと思わず、逆に藤井を追い込んでいった渡辺に、第一人者としての貫禄と誇りを見た気がしたものだったが、藤井の勢いを止めることはできなかった。

 また王位戦の方は、現時点で藤井の2連勝。こちらも最年長タイトル保持者の木村一基王位を相手に、奪取の可能性が高まってきた。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 

 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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