揺るがぬ「女流2強時代」 加藤桃子女流三段は復活ならず 藤井聡太七段のようなスター出てこい

勝負師たちの系譜

 このコロナ騒動の中、女流のタイトル戦2つは普通に進行し、無事終了した。

 最初に始まったのは「マイナビ女子オープン」で、4月初旬、神奈川県鶴巻温泉の『陣屋』からスタートした。

 今回は西山朋佳女王に加藤桃子女流三段が挑むという構図で、加藤にとっては過去4期、女王の座に君臨した、ホームグラウンドとも言える棋戦だ。

 そのせいか、初戦は西山の三間飛車を加藤は穴熊から見事な指し回しで完勝し、女王復活なるかを思わせた。

 しかし西山の底力はそこからだった。第2局以降はコロナ感染防止のため、対局場を将棋会館に変えて行われたが、もう一つの得意戦法である中飛車に変えて勝利。この後も第3局を三間飛車で敗れたものの、再び中飛車に持ち替えて連勝し、西山が女王の座を死守した。

 このシリーズは結局、先手番がすべて勝ち、そして中飛車はすべて西山の勝ちという、偏ったシリーズとなった。

 次の「女流王位戦」も、里見香奈女流王位に加藤が挑戦するという構図。加藤にとっては初の舞台、里見は過去5回保持している、ホームグラウンドだ。

 本来なら三社連合加盟の主催紙がある、北海道から九州まで回るのだが、今年はすべて東京と大阪の会館での対局である。

 こちらは里見が初戦から飛ばし、第3局まですべてを得意の中飛車で立ち向かい、加藤を圧倒して防衛した。

 結局加藤は、西山、里見の2人に中飛車で負け続け、タイトルに届かなかった訳で、今後の課題は中飛車に対する指し方の見直しであろう。

 女流トップのレベルが格段に上がったことにより、女流棋士は大きく分けて、タイトルを争う数人の1軍、挑戦者を争う十数人ほどの2軍、そして普及を担う3軍に、ハッキリ分かれてしまった感がある。

 もっとも奨励会初段まで行き、なおかつタイトル経験者の加藤でさえ、今やタイトル奪取が難しいという現実を見せられては、西山、里見のツートップを崩すのは容易でないと、誰しもわかること。

 しかしそれを女流全員が諦めては、女流棋界の発展はない。こちらにも、藤井聡太七段のようなスターが欲しいと思うのは、私だけではあるまい。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 

 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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