日程重なるタイトル戦 若手棋士は防衛戦になると守りに入る?

 【勝負師たちの系譜】

 4月から延期されていたタイトル戦が、次々に始まってきた。従って複数のタイトル戦に出場する棋士は、かなり厳しい日程となるのは必至だ。

 ヒューリック杯棋聖戦に続いて、名人戦が2カ月遅れで三重県鳥羽市の『戸田家』から始まり、初戦は初挑戦の渡辺明三冠が豊島将之名人を破った。

 次に叡王戦が6月21日から開幕。対局場は伊豆今井浜海岸の『今井荘』で、ここは上皇さまが宿泊し、将棋を指している写真が残っている名旅館だ。

 挑戦者の豊島は名人戦第2局を山形県天童市の『天童ホテル』で勝利した翌日、天童から伊豆に移動しての対局である。

 叡王戦初戦は永瀬拓矢叡王に対し、相手の得意とする相早繰銀で対抗した豊島だが、全体的に抑え込まれて、大苦戦。

 「ニコニコ動画」解説の中村太地七段や立ち合いの私も、ハッキリ永瀬優勢の判断を下していたが、本人はそれほど良いとは思っていなかったのか、豊島の「何とか千日手に」というお願いをアッサリ受け入れてしまう。

 これには見ていた者、すべてが驚いた。いくら永瀬が千日手は苦にならないと言っても、私には千日手が成立した局面でも、叡王に勝ちがあると思っていたからだ。

 残念ながら指し直し局は、豊島の完勝に終わり、永瀬の千日手作戦は実らなかったが、ちょっと永瀬の変調を感じたものだった。

 考えてみると、最近の勢いある若手棋士は、タイトルを奪取するまでは実に冴えた指し回しを見せるものの、防衛戦になると精彩を欠き、一期で失冠することが多い気がする。

 特に王位戦、王座戦、この叡王戦などで見られ、保持者が防衛戦となると、守りの気持ちに入るのだろうか? そういう豊島も、まだ防衛戦は勝っていないのだ。

 叡王戦から2日後には、豊島は王座戦の本戦トーナメントで勝利。また永瀬は同日、王位戦の挑戦者決定戦を藤井聡太七段と戦うなど、日程は密になっている。

 この勝負は藤井が制し、棋聖に続いての挑戦者に名乗り出た。

 今年の藤井は待望どころか、複数の挑戦になるかもと書いた、私の予想は見事に的中。多くのタイトル戦が同時進行するこの夏は、益々目が離せない。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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