新指導要領でアクティブラーニングどう実現…感染予防との両立苦慮

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、手洗いの徹底や検温などさまざまな対策を取りながら授業を再開した小学校が、今年4月に全面実施された新学習指導要領の実現に苦慮している。教科にかかわらず、子供同士が話し合いながら積極的に学ぶ授業形態の導入が柱の一つとされたが、子供たちが近距離で長時間話し合えば、感染リスクは高まってしまう。教育現場では、さまざまな模索が続いている。(藤井沙織)

 ■高まる感染リスク

 「最も議論が活性化する4、5人での話し合いができない。仕方ないことだが…」。京都府内のある公立小の教頭は悔しさをにじませる。同校は昨年度から子供同士の議論を重視し、課題を与えてグループで話し合いを重ねる授業を行ってきた。多くの児童が話し合いに積極的にかかわるようになっていたが、継続できなくなった。

 新学習指導要領では科目を問わず、「主体的・対話的で深い学び」の視点で授業を行うことが掲げられている。アクティブ・ラーニング(AL)とも呼ばれ、教員の話を聞いたり教科書を読んだりするだけではなく、児童がそれぞれに意見を持ち、議論を通して考えを深めるグループワークの導入などが求められた。

 多くの教育現場では、昨年度までに先行的にこうした授業を導入していたが、新型コロナによって事態は一変した。文部科学省が今月16日に更新した学校向けの衛生管理マニュアルでは、「児童生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワーク」について、感染のリスクが特に高いと規定。特定警戒都道府県など感染が拡大する地域で実施しないことはもちろん、顕著な感染拡大のない地域であっても、「可能な限り感染症対策を行った上での実施を検討」と、慎重な対応を求めている。

 ■やり方はさまざま

 文科省の担当者は「話し合いの時間を短くするなどやり方を工夫し、指導要領に則した授業をしてほしい」と話すが、現場は感染症対策との両立に悩む。

 大阪市立中野小では、子供たちにフェースシールドを着けさせてグループワークを実施した。牧野美奈子校長は「暑い中でのフェースシールドの着用は大人でも非常にしんどい」と話し、話し合いのときだけ短時間に限定して着用するようにしたという。

 一方、京都府の公立小は従来のグループでの話し合いをやめ、距離をとってペアで短時間話し合う▽人の発表を聞き、意見を個別に発言する▽個々の考えをプリントにまとめて共有する-ことでALの実現を目指すことにした。

 AL研究の第一人者で桐蔭学園(横浜市)の溝上慎一理事長は「人の意見を取り入れて考えを深めることが重要。グループワークばかりがALではなく、やり方はさまざまある」と強調。コロナ禍においてもこうした学びを継続させるため、「学校は従来の授業スタイルにとらわれず、衛生管理マニュアルの中でできることを探すべきだ」と話している。

     ◇

 新学習指導要領 児童生徒に教えなくてはならない最低限の学習内容を示した基準で、文部科学省が約10年ごとに改定する。今回は平成29年に改定し、小学校は今年4月から全面実施。国際社会に通用する力を身につける外国語教育、情報化に対応するプログラミング教育、さまざまな課題に向き合う道徳教育などを充実させるとともに、全教科を通じて子供たちが能動的に学べるように授業の形態も改善する。中学校では令和3年度から、高校では4年度から全面実施され、能動的に学ぶ授業形態は中高でも取り入れられる。

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