緊急事態宣言中に毎日1作 コロナ「明けない夜はない」

 新型コロナウイルスの影響でフランス移住の予定を延期せざるを得なくなったアーティストが、緊急事態宣言発令中の45日間アトリエにこもり、毎日1作ずつ作品を制作した。服にペンキで絵を描くという独特のアートで注目され、伊高級ブランド「フェンディ」のバッグデザイナーにも選ばれた小川貴一郎さん(49)=兵庫県西宮市。自分と向き合う「監禁芸術」の最後を飾る45作目には「明けない夜はない」との思いを込めた。(古野英明)

うごめくウイルス?

 約1・5メートル四方のキャンバスを埋め尽くすハートや円形の模様。滴り落ちるに任せた赤いペンキが不気味さを増す。まるでウイルスがうごめいているように見える。兵庫県の緊急事態宣言が解除された5月21日、小川さんが約2時間をかけて制作した45作目だ。

 もともと赤はなく、下には別の絵があった。「赤い模様を入れただけで、裏にどんな絵が描かれていようが、人々の目にはコロナしか見えなくなる」と小川さん。新型コロナの不安に覆われる世間を象徴しているという。

 小川さんはいつも音楽をかけながら絵を描く。音楽からもインスピレーションを受けながら、自らの内にある衝動を、書道のように一気呵成(かせい)に描き上げる。

 45作目を制作中に流していたのは、中学生時代によく聴いていたドイツのアーティスト「Die Partei」の「グーテン・モルゲン・イン・ケルン」。この曲名が絵のタイトルになった。

 曲調について「科学実験でウイルスを採取しているような感じで、聴いていると気がめいりそうになる」としながら、「でも決してネガティブな曲ではなく、独語の『おはよう』というタイトルからは『夜明け』や『雪解け』といった希望も感じさせる。そんな曲です」。そしてこの絵からも、コロナ禍の先にある「希望」を感じ取ってほしいと願う。

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