専門家に聞く「認知症は予防できるのか?」 「心の老い」特別編

 夕刊フジの好評連載「心の老い」シリーズで、最も問い合わせが多かったのが「認知症を予防することができるのか?」。医師でジャーナリストの富家孝氏が、精神科医の吉竹弘行氏に聞く。

 --ほかの病気と同じように、認知症も老人性うつも早期発見・早期治療が大事だといいます

 「そうですね。両者の初期症状は似ているので、早い段階で診断がつけば、治療や介護サービスなどを受けることで、その後のQOL(生活の質)が維持・改善できます。ただ、もっとも大事なのは、予防です。最近は予防医療の研究が進んで、どうすればいいかがいろいろ指摘されています」

 --と、いいますと

 「まず言えるのは、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣関連が強いため、糖尿や高血圧を予防することが、間接的な認知症予防につながるということです。適度な運動、そして、低塩分・低糖質の食事が、動脈硬化や脳血管障害のリスクを下げます。そして、十分な睡眠、質の高い睡眠です」

 --要するに、よく寝て、よく食べて、よく動くということですね

 「それを言うと、『当たり前ではないか』と言われますが、これがなかなかできない。とくに食事は偏食になりがちで、多くの食材をバランスよく摂っている人はあまりいません。高齢者の場合、一人暮らしになるととくにそうなります」

 --脳を使う知的活動はどうですか?

 「これも必要です。漫然とテレビを見てすごすより、読書をする。コンピューターで検索やなんらかの作業をする。ゲームをやる。知人、友人と会話を楽しむなどは、認知症発症を遅らせるはずです。手先を使う活動は脳と直結していますから、積極的に行うべきです。手先を使いなが考える、囲碁、将棋、麻雀も効果的です」

 --認知症に限りませんが、どんな病気も、予防で大切なことは2つだと私は思っています。一つは、社会・共同体・友人・家族とのつながりのなかで暮らすこと。もう一つは、いい食事をすることです

 〈米マサチューセッツ総合病院で、76年にわたって742人のアメリカ人の人生を追跡した調査研究がある。2015年にこの調査研究を発表した研究責任者ロバート・ワルディンガー氏は、『家族や友人、共同体と結ばれた人々は、そうでない人々よりもより幸福、健康、長寿である。孤独は命を縮める』と、研究をまとめた。

 また昨年、英医学誌『ランセット』に載った大規模な研究論文では、食事が死者をどの程度増やす原因になったかを推計。「不健康な食事」の影響で亡くなった人は、全世界で約1100万人もいる〉

 「周囲との関係と食事ですか。私も同感です。精神疾患から認知症まで、最近は“心の病”と呼ばれていますが、心と体はつながっています。心を健全にすれば体も健全になり、体を健全にすれば心も健全になるわけです。その意味でいくと、いまの医療現場が、科目別に細部に分かれ、心臓なら心臓、脳なら脳だけしか診ないのは間違っているかもしれません。認知症、うつ病などにならないようにするためには、トータルなケアが大事だと思います」

■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。

■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。「不要なクスリ 無用な手術」(講談社)ほか著書計67冊。

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