両陛下、コロナの試練に寄り添われ

 新型コロナウイルスの感染拡大により、代替わりから1年となる皇室の活動にも大きな影響が出ている。天皇陛下の即位後、初めての本格的な国際親善の場となる予定だった英国訪問や、「立皇嗣(りっこうし)の礼」などの重要行事が相次いで延期となり、恒例の地方行事ご臨席も実現の見通しが立っていない。令和に入り最大の「試練」ともいえる感染症の脅威が広がる中、天皇、皇后両陛下は現場の声に耳を傾け、国民とともに歩む道を模索されている。

 「これまで、日夜、現場で医療などに携わってこられている多くの関係者のご努力を深く多(た)としています」

 4月10日、赤坂御所で行われた尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長による進講の冒頭。陛下はあいさつで、まず、感染症に最前線で向き合う人々へのねぎらいの言葉を述べられた。さらに、さまざまな困難に直面する国民を案じ、「私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら、この感染症を抑え込み、現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています」と結ばれた。

 こうした進講の場での陛下のご発言内容が明らかにされるのは「極めて異例」(宮内庁幹部)という。ご発言は後日、宮内庁のホームページにも掲載された。皇室の制度に詳しい名古屋大大学院の河西秀哉准教授(日本近現代史)は、「政府がさまざまな対策を講じる中で、天皇の発言は国政に影響を与えかねない。陛下はあいさつという形をとりながら、『尽力者へのねぎらい』『国民への寄り添い』という2つの柱で慎重に言葉を選び、国民に対してもメッセージを発せられたのではないか」と分析する。

 この日の進講は40分ほどの予定時間を超え、約1時間半に及んだ。両陛下はメモを取りながら熱心に聞かれていたといい、尾身氏は「現場がどんな苦労をしているのか、報道だけではなく『生の声』を聞きたい。私のような者をお招きになったのは、そういうことだったのではないか」と振り返る。

 感染拡大をめぐり、皇室では、2月23日の天皇誕生日の一般参賀中止以降、行事の取りやめや延期が続いている。貴重な国際親善の場となる海外訪問のほか、両陛下ご臨席の下、5月に島根県で開催予定だった「全国植樹祭」など、国民と直接触れ合う機会として皇室が重視してきた地方訪問も延期されている。

 こうした中、陛下は2月の誕生日会見で、「感染の拡大ができるだけ早期に収まることを願っております」とご言及。また3月、長女の敬宮(としのみや)愛子さまの高等科ご卒業に際して寄せた文書でも、「多くの人々が直面している様々な困難や苦労に深く思いを致しています」とつづられていた。4月に入り、両陛下は尾身氏のほか複数の専門家から進講を受けられている。

 河西氏は「災害の被災地訪問のように、現場へ赴き、人々と触れ合うといった『平成流』の象徴としてのご活動がかなわない中、今回のように何らかの形でメッセージを発信することも、現状においては国民に寄り添う一つの手段となっていくのではないか」と指摘する。

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