春の叙勲 旭日双光章 古くも新しい装い追求 鞘師、高山一之さん(80)=東京都目黒区

 カーテンを閉め切った薄暗い一室。手元の明かりだけを頼りに、鋭いまなざしで木材を削りとる。

 「いろんな角度からの光があると、陰影がわからなくなる。横からの光だけで細かな調整をする」

 時代によって装飾が大きく異なる刀剣の「拵(こしら)え」の世界。江戸時代から続く鞘師(さやし)一家の6代目で、卓越した技術と深い時代考証だけではなく、伝統にとらわれない斬新な発想で日本古来の伝統文化に新たな風を吹かせてきた。

 「見て盗め」という方針の父から、見よう見まねで一つずつ学んでいった。「うちのものが一番。他所のは見るな」という職人も多いなか、父は他の職人の講習会にも積極的に行かせ、「考える力がついた」という。

 鞘師に専念する前は、漆塗りや柄巻も経験。叔父の重要無形文化財保持者(人間国宝)、藤代松雄さんに師事し、刀剣研磨を学んだこともある。鞘師は土台の鞘を作るだけではなく、彫金師や塗師など多くの職人に依頼しながら外装全体をコーディネートする職業。「何でもやったのが生きている」と話す。

 考える力は文化財の扱いでも生きた。丁寧に歴史的背景を読み解き、国宝や重要文化財など数々の刀剣の拵えの修復や復元に成功。素材や構造は時代によって異なるが、それを研究するのも一つの楽しみだ。

 藤ノ木古墳(奈良県)から出土した6世紀の刀剣では、「ミイラのような状態」から考古学者と協力し、材料を特定。類似した刀剣が残る韓国へ足を運んで構造を学び、復元した。

 「昔の人は道具がないのにこれだけ難しいことをやった。今はいろんな道具があるのにできないわけがない。絶対やるぞという心持ちでやっている」

 平成30年9月には国の選定保存技術「刀装(鞘)製作修理」保持者に認定された。傘寿を迎えた現在でも探究心は尽きない。

 「絵を描く人は描きたくなるから描く。同じように次から次へと考えて形にしていくのが楽しくてしようがない。それが今も続いている」。あくなき挑戦が原動力だ。

(石原颯)

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