岡江さん訃報でがん患者から不安の訴えも…学会や専門家「放射線治療で免疫力低下ない」

 新型コロナウイルスによる肺炎で23日に急逝した女優、岡江久美子さん(享年63)の訃報が、がん患者に不安を広げている。所属事務所の発表やその後の報道で、乳がんの手術後に受けた放射線治療で免疫力が低下していたのが肺炎の重症化の一因と考えられるとされたためだ。学会や専門家は、放射線治療による免疫低下はないとして治療の継続を促す一方で、一般的にがん患者の重症化リスクが高いことから感染予防の徹底を訴えている。

 岡江さんが亡くなったニュースが流れた23日から、ツイッターなどのSNS上で、がん患者やその家族が不安を訴える書き込みが増えた。新型コロナウイルスの感染が拡大している現在、手術や放射線治療などを受けるべきか、といったものだ。

 岡江さんの所属事務所が公表した文書に「昨年末に初期の乳がん手術をし、1月末から2月半ばまで放射線治療を行い免疫力が低下していたのが重症化した原因かと思われます」とあった。これに対し、日本放射線腫瘍学会は24日、医療関係者に向けた見解をウェブサイトで公表した。

 「早期乳がん手術後に行われる放射線治療は体への侵襲が少なく、免疫機能の低下はほとんどきたしません。現在のところ乳がん術後の放射線治療が新型コロナウイルス感染症の重症化を招くという科学的根拠もありません」。同学会はこう強調し、現場の医師らには、術後の放射線治療が乳がんの再発リスクを低下させ、生存率向上をもたらすことを患者に丁寧に説明した上で、治療継続を促すよう求めた。

 専門家によると、乳房と肺は近い位置にあるため、放射線が肺に当たって肺炎を起こすケースがあるほか、一部の抗がん剤で肺炎の副作用が知られる。もっとも日本乳がん学会のガイドラインでは「放射線が肺に照射されることによって起こる肺炎はまれ」という。

 ただ、がんなどの基礎疾患を持つ人は、もともと重症化のリスクが高い。日本臨床腫瘍学会はウェブサイトで、1カ月以内に抗がん剤投与や手術を受けた患者は、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いとする中国の研究を紹介。こうした患者には薬を30日分確保した上で、なるべく家にいるよう求めた。

 乳がん患者は40~60代と比較的若い女性患者が多いのも特徴だけに、正しい知識と理解、対応が必要になる。

★「過剰に恐れる必要はない」

 「親子で考える『がん』予習ノート」(角川新書)の著者で、正しい知識の周知に努める国際医療福祉大病院・内科学教授の一石(いちいし)英一郎氏は、新型コロナウイルスに感染する恐れについて「がん治療後の影響で抵抗力が弱ったり、体力が落ちたり、がん浸潤やがん拡大により、体が黴菌(ばいきん)やウイルスに負けてしまいやすい可能性はある。過剰に恐れる必要はないが、注意深く他者との接触を避けるようにしてほしい」という。

 感染予防を優先し、放射線治療を先延ばしにする判断は、がんの進展度など個別の患者の状況による。一石氏は「がん治療の主治医とよく相談し、ご本人の体調や状況に応じた治療を行うことを勧めたい」とした。

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