少なさ際立つ日本の「コロナ死」 病床数など関係も…「ドイツや韓国を見習え」論の不可解

 新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言から2週間が経過した。20日には1日で最多となる25人の死者が出るなど厳しい状況が続く日本だが、統計上で特筆すべきなのが、欧州や米国などと比べて死者数が少ないことだ。特に人口比でみるとその差は歴然だ(別表)。今後も感染爆発の恐れはあり、気を緩めるのは厳禁だが、「コロナ死を隠している」など荒唐無稽な説に惑わされず、事実を確認しておきたい。

 国内では20日、新たに345人の新型コロナウイルス感染が確認された。死者は25人で1日の死者数として最多、累計276人となった。

 だが、人口10万人当たりの死者数ではスペインの43・8人、米国の11・9人と比べると日本は約0・2人と2ケタ違う。

 なぜか一部メディアがほめそやすドイツの死者数は4300人を超えている。ワイドショーなどが持ち上げる韓国も死者数は20日時点で236人と日本を下回るが、人口比ではほぼ2倍だ。

 こうした数字を挙げるとすぐに出てくるのは「日本はPCR検査が少ないため実態が反映されていない」という議論だ。日本は医療崩壊を避けるため重症者の治療やクラスター(感染者集団)つぶしに重きを置いてきたため、カウントされていない無症状者や軽症者が多い可能性はある。だが、「新型コロナによる死者を隠している」というのはさすがに荒唐無稽だ。

 東京都は死後にPCR検査の結果で感染が判明した場合でも、原則的に感染者の死亡として公表している。全国の警察が3月中旬から4月中旬までの約1カ月間に変死などとして扱った遺体のうち、埼玉、東京、神奈川、三重、兵庫5都県の計11人が感染していたことが分かっている。

 医療リスクマネジメントに詳しい内科医で、中央大大学院戦略経営研究科教授の真野俊樹氏は、「死者数は嘘をつけない。新型コロナウイルス感染症は間質性肺炎なので普通の肺炎と異なるため、見落とすケースはほとんどないはずだ」と否定する。

 真野氏は「私の専門は海外との客観的比較で、現場の医療関係者とで見解は異なるかもしれないが、日本の健闘には、転換可能な病床数の多さや患者の在院日数の長さが、医療の余裕になって関係しているのではないか」と指摘する。

 経済協力開発機構(OECD)の2017年の統計では、1000人当たりの病床数はスペインが3・0、イタリアが3・2で、米国が2・8、英国が2・5とさらに低く、日本は13・1と加盟国中最も多い。

 注目されているのが、米疾病予防管理センター(CDC)の機関誌電子版に掲載された論文だ。中国・武漢の集中治療室で働く医療従事者の靴底から新型コロナウイルスが確認されたという。室内で靴を脱ぐ日本の生活習慣が感染死の少なさにつながっているのか。

 東北大学災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は、「大きな差になるかは微妙だが、SARS(重症急性呼吸器症候群)の際もホテルの掃除でカーペットのウイルスを吸入して感染したという報告がある。新型コロナウイルスも布や床、壁で2~3日生きているとされ、靴を脱ぐことで屋内のウイルスの濃度を下げることになり、感染確率は下がる」と指摘する。

 厚生労働省の統計では、新型コロナウイルスによる死者は70~80代が多いが、感染者は20代と40~50代が多い。

 児玉氏は「欧米では死亡リスクが高い60歳以上の感染者が多いのに対し、日本は50歳以上が少ないため、感染者数の増加の割に死亡者が少ないと考えられる。高齢者が欧米ほど出歩かないなど、文化の違いもあるかもしれない」とみる。

 厚労省のクラスター対策班や現場の医療従事者の奮闘、多くの国民の自粛の努力もあって持ちこたえている日本だが、感染者も死者も増え続けていることは厳粛に受け止めるべき事態だ。前出の真野氏は地方での感染爆発に懸念を示す。

 「沖縄県の石垣島で感染者が出たが、こうした例は危険だ。国内での医療資源は都市部に偏在しているため、地方で感染が広がれば、感染者数が横ばいのままでも死者数が急増する恐れがある。都市部から動かないことが重要だ」

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